秋と春か夏か冬 08話〜『溢るる涙』〜-4
「行きましょうか……美雪…さん」
「了解ぃアッキー♪♪」
「……別に俺は駅に用はないんだった」
帰ろうとする。
「ごめんごめん。冗談だよ恭介♪」
そう言って歩き出す。
「…で、俺が変わってるとか言ってなかったか?」
「うん。だってアッキーって…」
帰ろうとする。
「うそうそ。恭介ってさぁ…会ったばっかの私みたいな他人には線ひいてないで、理緒や鈴って呼んでる友達には壁つくってるんだもん。普通逆だよ」
恭介は立ち止まった…。
「…なんでそう思う?」
不思議とばかりに見る恭介。それをジッと見つめて話する冬白。
「だって二人の名前が出てから様子変だもん。なんか辛そう…まるで大事なものを壊したくない〜って、触れないようにしてる感じかなー」
「それに二人と知り合いって聞いてから…私にまで壁つくろうとしてる」
そう言って笑う冬白。
(会ったばっかのヤツに…なんで…)
「近くに来てほしくないのか、触れてほしくないのか…よくわからないけど…必死に傷口を隠してる」
次々と嫌なことを言い当ててくる…。
「でもさぁ、傷口って絆創膏を貼ってばっかだと化膿しちゃうよ?たまには空気にさらさないと善くならないって♪」
「……お前に俺の何がわかる…」
声が震える…。
「わからないよ。他人だもの♪♪」
そう言って笑う冬白。
「壁や線を作るなとは言わないさ。でも私を線の内側に入れてよ♪まだ他人のうちにさ♪♪それから友達になれば…私は友達のまま、君の内側に入れるじゃない。わたしって天才♪」
…なんなんだこいつは?
事故のこともバスケのことも知らないから言えるのか?
今日会ったばっかで…方向音痴で…マヌケで……なのに…嫌なとこばかりついてくる。
傷を隠しても良い…でも…お前には……見せても良いのか…?