秋と春か夏か冬 08話〜『溢るる涙』〜-3
「まぁそーゆーことにしとく。ところで駅へ行くんじゃなかったのか?」
「そうだった!忘れてた!急がないと」
「あっ、ハンカチ…おい」
俺の言葉の前に走って行ってしまった。
(駅までの行き方も知らないんじゃないのか?)
……変なヤツ。
――5分後――
「あれ、なんでいるの?」
「おまえの方こそなんで戻ってきてる?」
拳を冷やしながら座ってると変な女が戻ってきた。
「私は駅へ向かっただけだよ。あんたこそ…ってあれ?もしかして戻ってきちゃったの?」
「方向音痴なのか?」
「失礼な。方向がわからないだけ…あっ、駅の場所もわからないんだった!」
方向音痴のうえにかなり抜けてるヤツだった。
「意外とマヌケなヤツなんだなおまえ」
「…あんたは意外と失礼な人だ」
「なんとでも。それより駅がわかんないんだろ。案内しようか?」
「えっ、良いの?なんだ優しいじゃん。そーいえばさっきも助けてくれたんだよねー」
「そーいえばって…ついさっきのことだろ」
「あはは、そうだった。じゃぁよろしく頼みます♪そだ、名前なんて言うの?」
「……」
「なんで黙るのさ!名前だよ名前」
「…秋津 恭介」
「秋津…恭介?なんか聞いたことある……あっ、理緒と鈴ちゃんって子が心配してた名前だ!」
「……なんで理緒と鈴を知ってるんだ?」
「だって一緒のクラスだもん。二人が話してるのを偶然聞いちゃっただけなんだけどね…あっ、最近転校してきたんだ」
てことは、こいつが隣のクラスにきた転校生か。
「あんたも同じ学校?二人の友達?」
「…一応」
「暗いヤツだな〜。わたしは冬白 美雪。美雪って呼んでも良いよ♪」
「…早くしないと日が暮れるぞ冬白」
「アッキーって変わってるねー」
「…アッキーってのやめてくれないか?」
「でもわたし美雪って言う可愛い名前があるんだよ?」
自分で可愛いって言うか?