年上の事情。‐9-2
「亜季姉っ亜季姉〜」
ドタバタという足音で、現実に引き戻される。
もうっなんなの!
「あっいたいた!
亜季姉ひさしぶりです!出張どうでした?」
あたしに抱きついてきそうな勢いで、祝さやかは近づいてきた。
「うん、まぁ‥」
「あっ、そんなことよりも!」
あたしが言い終わらないうちにまた彼女は話しだした。
そんなことって!
アンタが聞いてきたんでしょ!
「何かおかしいんです。2人、立花くんと鳴海くん」
あー‥
きた。
考えないようにしていたのに、やっぱりそういうワケにはいかないらしい。
「ケンカしたのかな、あの2人。何か空気がおかしいんです」
広告部に戻る途中、出勤してきた香ちゃんに会った。
「おはよう」
「おはようございます」
香ちゃんはあたしの表情から何かを感じ取ったのか、それ以上は何も言わなかった。
いってくるよ。
部屋のなかは祝さんの言ったとおりに嫌な雰囲気が漂っていた。
一部分だけ空気が張り詰めていた。
『それ以上の感情はない』
ふいに昨日の鳴海くんの言葉を思い出した。
彼はこっちを見る事無く作業していた。
立花くんを見ると、目が合った。すでに、こっちを見ていたようだ。