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Blackmail
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Blackmail-9

「…三上…恭香さん?」

抑揚の無い口調。明らかに機械的に加工した声が、恭香の耳に響く。

「貴方は?」

「アンタにメールを送った者さ」

その言葉に恭香は、感情のまま罵る。

「アンタどういうつもり!人のプライベートを勝手に撮って!警察に訴えるわよ」

上ずった恭香の声は、管楽器のようにリビングに響く。だが、相手は、そんな彼女の気持ちを嘲笑うように、

「訴えて困るのはアンタじゃないのか?あの映像を警察に見せる事になるからな。
もっとも、その前にオレが会社や取引先にバラまいてやるがな……」

恭香は、相手の言葉に何も言えなくなり、おし黙ってしまった。

相手が言葉を続ける。

「どうだ?ここらで取引と行こう」

「どういう意味?」

「なに、簡単な事だ。アンタがオレの言う通りにすりゃあ、これまでの映像をひき渡すよ」

恭香はしばらく考えた。だが、それ以外に方法は無いと悟ると、

「…分かったわ…何をすればいいの?」

受話器の向こうから〈ピュウ〉と口笛を吹く音が聴こえ、

「さすがMBA取得の才女だ。よく状況が分かっているな。
いいか。明後日の深夜1時に会社のオフィスに来い。深夜1時だ。もし、来なかった場合は……分かるよな?」

相手の言葉に恭香は力無く頷き、

「分かったわ」

返事を聞いた相手は電話を切った。恭香は、しばらく受話器を見つめていたが、元に戻すと、こみ上げてくる怒りと従わざるを得ない自分の情けなさが入り混じり、その場にへたり込むと嗚咽を漏らした。





ー翌朝ー

「三上部長!ご査収願えますか」

突然の声に驚く恭香。顔を上げると、琢磨が書類を持って立っていた。

「分かったわ」

恭香はそう言うと、琢磨から書類を受け取りページをめくる。

「クライアントは太平建設です」

内容は完璧だった。
今現在における建築業界の立場と、景気動向。そして、今後の在り方を的確に表していた。


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