Blackmail-3
ー深夜ー
プログレス・コンサルティング社 営業部。
アイボリーとグレイを基調とした、広く無機質な空間にわずかな明かりが灯る。
琢磨は今朝、恭香から指示された資料見直しの最中だった。
「…これで…ヨシと」
静寂を破って、プリンターの規則正しい作動音がフロアに響く。
琢磨は席を立つと、軽く伸びをして窓から外を眺めた。
外灯以外の照明は消え失せ、昼間は交通量の多い前の道も、時折通るだけで静かだ。
琢磨はポケットからマールボロを取り出し火をつける。禁止されてる社屋での喫煙が、彼の密かな楽しみだった。
会社へのと言うより恭香に対するささやかな抵抗のつもりなのだろう。
その時だ。携帯が震えて自己主張する。琢磨は〈誰だこんな時刻に〉と、自らのデスクに歩み寄ると、携帯を掴みディスプレイを眺めた。
(メール…?)
ディスプレイに刻まれたアドレスは見覚えの無いモノで、本文は無く画像が添付されている。
(…広告では無いようだが、誰だ?)
琢磨はしばらく躊躇した後、メールを開いた。
(な、なんだ?これ…)
映し出されたのは、全裸で大股を開いた女性の姿だった。
ワインカラーのソファに腰掛け、ヒザを立てて己の秘部をカメラに向け、バイブレーターを自身で出し入れする表情は快楽に酔いしれている。
琢磨は息を呑んだ。その出し入れする秘部は、ぬらぬらと濡れているのが携帯の画面でも分かるほどだ。
琢磨は、自らのモノが熱くあるのを覚えた。
(…アレッ?これって……)
画面の行為に夢中だった彼は、初めて女性の顔を見て驚いた。
(…み…三上…部長……)
琢磨は、短い動画を何度も再生して確認する。髪を下ろしメガネを外してはいるが、その顔は間違いなく三上恭香だ。
(…何故こんなモノが…誰がオレの携帯に……)
琢磨は考えた。こんなモノを自分に送り付けるのだから、会社の人間には間違い無い。
琢磨は画像を切ると、同僚の岡野に連絡を入れる。長いコール音が続いた後、男のかすれ声が聞こえた。
「…なんだ?……」
真夜中に起こされて、不機嫌そうな岡野の顔が、琢磨の目に浮かぶ。