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輪転
【悲恋 恋愛小説】

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輪転-1

 コップの底に残ったコーラを飲み干し、ただひたすらに携帯電話との睨み合いを続ける蓮は、ある人物からのメールを待っていた。今は短大に行っているが、その人物との出会いは高校3年の夏休み前、その人物がいきなり転校し、蓮と同じクラスになったのがであいだ。
「やっときた…」
数分後、携帯電話は大きな音を立てて振動する。
<そうね…でも間違ったとは思わないわよ?>
その返事にカッとなる。何も知らず、何もしていないくせにと、蓮は心の底から思った。


 「何様のつもり…」
夏休みにも関わらず、二人は校舎の裏側で、人知れず口論を続ける。むしろ、凪にそのつもりはなく、蓮が一方的にまくし立てているだけでしかない。
「私はあなたに忠告してるだけなのよ?」
「彼を狙ってるの?やめてよね!」
ズイと凪に一歩近付く。しかし、凪はそれを、ものともしないかの様に一言言い放った。
「彼はあなたをおもちゃとしか思ってない」

 それから二年が経つ。蓮はまだ、その彼との交際を続け、凪はその忠告を今度はメールで告げてきた。うざったく思ったが、凪のメールを読み返す度に、自分に対して真剣に話している様に見えた。
<それでも、私は今でも彼を愛しているわ?>
蓮は送信ボタンを押し、一息つく。しかし、いくつか府に落ちない点が気になっていた。
(なんで…おもちゃだとしか思ってないとか言っといて、まだ付き合ってる事知ってるんだろ…)
疑問は不安に変わる。
(教えてもないアドレスだって…)
少しづつ、蓮には真相が見え始めた。そう、コツコツと音を立て、蓮には真実が近付きつつあった…。
 ほんの30分ほどして、凪からのメールが返ってくる。
<愛…ね…。哀の間違いじゃない?彼は──>
一番見たくなかった文字が、そこには並んでいた。夢を壊し、理想を崩し、現実への回帰を、蓮は知ってしまう。
<──彼は、もういないのだから…>


 今でも人知れず、とある病院に彼女はいる。お経のようにある言葉を繰り返しながら、窓の外を見てはうなだれている。
「彼は私のモノよ…」
自分で別れを告げたはずなのに、いざいなくなると恋しくなる。
「あの女は友達なんでしょ?」
手のひらの携帯電話を見つめ、震えながら、町で見かけた光景を思い出す。凪と歩いていた…その姿を…。そして、もう凪の言葉の意味を理解することもできない。
『おもちゃとしてしか──』

 彼の病気を知らず、生きている間の糧にしかされず、ただ夢の中に取り残され、真実を知ろうとしない蓮。これからも、知ろうとはしないだろう。蓮にとって、彼の死は壮絶のものだったから。レン=はす。花言葉は──『離れる愛』。


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