壊れた美少女と殺人ナイフ-1
薄暗い路地の裏。満月が綺麗で星が輝くとても良い夜。
目の前で、私より年上の男が泣き叫び謝っている。
――どうしてこの人は謝っているのだろうか……
そう思い考え込んでると、隙をついて謝っていた男がナイフを投げてきた。
――危ないわね…。
ただ無感動にそう思った。
数分後――気が付くと男が倒れていた。無意識に刺してしまったようだ。2本のナイフが男の胸――心臓あたりと男の片目に刺さっている。
「あぁーそうだったわ…」
――久々に楽しもうと思ったんだ…あぁ、でもこれじゃ楽しめないわね…
残念に思いつつ、ナイフを引き抜く。勢いよく血が吹きで、男の体がピクピクと微動する。
男の血が私の足元まで流れた。血溜まりは美しい満月を真っ赤に映しだした。
人間壊れたら何でもできると思った。
ポツン――ポツン――
足元の血溜まりに手から流れ落ちる血の音。男のナイフがかすったようだった。
子供のころ母親は、『人間努力したら何でもできる』と言ったがこちらのほうがあっているのじゃないかと私は思う。
2本目のナイフを引き抜く。塞き止められていた血が勢いよくふきだす。
昔は、血を見るとすぐ倒れてた。ナイフなんて持ったことなかった。
だが、今は何も感じないし、持つのが当たり前になった。
どうして。
どうして。
どうして。
どうして。
あぁ、そうだった。
私は壊れてるんだ。
「…あっ、服に血、ついちゃった」
無邪気な声で小さく呟いた。
『壊れた美少女と殺人ナイフ』
都会の中心部に建てられた女子高校。
夕焼けが空を覆う時刻、生徒はまばらになっていた。
ある部室の一室、少女はナイフを磨いていた。
ナイフを磨く橘 愛はとても不機嫌だった。
原因は昨日の男が無駄な反撃をし、楽しむ前に殺してしまったからだった。