壊れた美少女と殺人ナイフ-5
美鈴その声で正気を取り戻したように
「す、すいません。話したこともない橘さんと友達って嘘ついたうえに相談なんて…」
「美鈴は大丈夫よ」
「えっ!?」
「美鈴はきっと愛されてるわよ。だってこんなにも友達のこと考えてるじゃない」
少女に微笑んだ愛。
ポニーテール少女は目の前の美少女に釘付けになる。
「徐々に頑張ろっ!私も手伝うわ美鈴」
少女の涙顔は笑顔に変わる
「う、うんっ!!」
合コンは意外にも普通の食事会だった。
万里子が予想通り沢山の料理を注文そして大食いし、冴子はそれを笑いながら眺め、美鈴は真っ赤になりながら私をチラチラ見ていた。
男たちは恥ずかしいのか、万里子の大食いに恐れを感じてるのか、あまり話さずメアド交換で解散になった。
もっとも私は誰にも気付かれず男の1人に小さな紙を渡しておいた。
解散し、私はすぐにある場所に向かって歩き出す。
自分が美鈴に微笑み応援した時のことを思いだす。
つい本音で話してしまった。
なぜか美鈴は昔の自分だと思えた。まだ壊れてない自分だと思えた。
どうしたのだろう、と自分に問いかける。
問いかけるが答えは出ない。
――なんか今日はすこぶる調子悪いわ…。
友達が出来たり、人の相談乗ったり。まるで自分が普通の女子高校生みたいじゃないか。
目的の場所につく。
そこは人通りのない路地。
その路地の暗闇から男が現れる。その男は合コンで小さな紙を渡した男だった。
「こんなもの渡してくるとは嬉しいよ…」
小さな紙にはこう書いてあった。『1人で――の路地に来てください。愛より』
「他の人には悟られずに来たわよね?」
「もちろん。君のような美人の誘いだからね…」
私は上着のボタンを外し、谷間を強調するように、見せつける。
「…あなたの思ってる通りよ。あなたので楽しみたいの…ここでね」
男の顔がにやけ、ベルトを外し始める。
――そう、これが私なのよ…こんなことする私が…
ナイフを後ろに隠し、男に近づく。男の息は荒く、下半身を露出していた。
「…いいわよ、あなたの好きにして」
男が私にむしゃぶりつくように襲いかかる。
――そう、これが今の私…
私はナイフを握る手に力を込め、男の胸に―――
暗闇。
すべてが闇に覆われるなか、1人の少女が浮かび上がる。
その少女の身体のあちこちには真っ赤な血が付着していた。
「…………なかなか良かったわよ」
少女は足元にある男だったもの――原形が何かさえ確認出来ないものに呟いた。
「…また…服に血、ついちゃった…」
呟き、そして、少女は無邪気に笑った。