壊れた美少女と殺人ナイフ-4
「その割りに、元気そう…」
「その娘、合コンの目的は食べ物なのよ…で、今回は初の高級店だからね…」
冴子が代わりに答える。
「今までだって、合コンじゃ食べてばっかりで引かれっぱなしよ…」
ため息をつく冴子に茶髪少女が反論する。
「失礼な!男もしっかり狙ってるって」
「どうせ男に食べ物たかるためでしょ」
図星を突かれ、ぐうの出ない茶髪少女に冴子は、また、ため息をついた。
着くころには、空は闇になっていた。
「じゃぁ、こっから歩きよ!私について着てー!」
先々行く万里子。よほどお腹が空いていると見た。
冴子も同じことを思ったらしく、仕方ないと肩をすくめ彼女に付いていく。
「私たちも行きませんか」
「そ、そうですね」
美鈴を連れ、あとを追う。
人混みはなく、すれ違う人は高級そうなスーツや時計を身に着けている。
――本当に、高級って感じね。今度獲物を探すならここにしよう。
「橘さんはすごいですね」
「えっ」
隣を歩いていた美鈴に話しかけられる。
「橘さんはすごいです」
「そうですか?…」
猫を被りつつ聞き返す。
「はい、だって今日が初対面の2人とすぐに仲良くなってるし」
「たまたま話が合っただけですよ」
「それだけじゃないんです!」
美鈴は目に涙を浮かべて言う。
「……私今日無理やりこの合コンに付き合ったんです。しかも私がいれば――」
「橘 愛が参加する、ですか?」
「…っ!?………聞いたんですか?」
「いえ、なんとなくです…」
いや、なんとなくではなかった。
着崩しや茶髪などお洒落をしている万里子。
美脚などスタイルが良く、それを、アピール仕切っている冴子。
この2人に比べて美鈴は真面目すぎるのだ。
これにはかなりの不自然さがあった。
「……すいません」
「いいですよ。こうして私も友達増えましたし」
心の中は
――かったるいことするわよねー。友達やめればいいのに。
「…でもすいません。私…」
顔を伏せると、ポニーテールが垂れ下がった。
少女はポツリポツリと話始めた。
「…あの2人とは、小学校からの幼なじみなんです。そのころは仲良しだったんですよ。でも高校になって2人はどんどんお洒落になって…美人になって……なんかどんどん話す機会なくなって…2年になった時にはすれ違っても挨拶しなくなって…」
少女の瞳から涙がこぼれ落ちる。
「…離れたくないんです。私、美人じゃないしスタイル良くないし、お洒落じゃないけど………」
「着いたーー!!」
「声大きいわよ、万里子」
遥か前を歩く万里子の大声と冴子の声が聞こえる。