壊れた美少女と殺人ナイフ-3
「では、まずは役割分担をしましょう」
「ちょっと、冴子私のセリフとらな――」
「万里子はうるさいわ。で、普通は基本女の子はこういうとはしないのけど今回は――」
「金持ちの坊っちゃんがいるの!!」
万里子が、身を乗り出して言う。
「こんなチャンスそうないんだから絶対いい人ゲッチュするの!」
言い切った茶髪少女から燃え上がるオーラを感じる。
美脚少女は少し万里子から離れ、
「暑苦しいのはほっといて、私たちはそうね、万里子が盛り上げで、私が色気って感じなんだけど」
ちらりと冴子が私を見て
「色気は橘さんに交代ね…スタイルも良いし、美人だし」
「いえ、そんなことは…」
「謙遜はいらないわ、私現実主義なんだ」
にっこりと笑う冴子。
「私と橘さんじゃ美人なのは橘さんだし、スタイルも橘さん。別に嫌味とかじゃなくてね。…私、橘さんを本当に綺麗って思えるから」
「……はぁ」
尻軽のただのバカなお色気女かと思っていたが、そうではないらしい。性格は嫌いじゃない。いや、むしろ――
――好きかもしれないわね……こういう自分の価値観をしっかりもってる娘は…
「…橘さんじゃなくて、愛でいいです」
驚き顔になる冴子だが、徐々に微笑に変わっていく。
「…じゃぁ私も冴子でいいわ」
見つめ合う2人の少女。
「よろしくね、愛さん」
「はい、冴子さん」
不思議と笑い合っていた。こんな風に誰かと会話したのは何年ぶりだろう。
「ちょっとー、2人で盛り上らないでよー」
茶髪少女が愚痴る。
「ってかもう行かないと待ち合わせ時間に合わないかもー」
「じゃぁ、行きましょうか。愛さん」
「あっ、はい」
立ち上がると、あとを追うように立ち上がる茶髪少女。
「ちょっと、いつの間に2人仲良くなったのよ!」
「さぁ。いつの間にでしょうねー」
いたずらっぽく笑いかける美脚少女。
「ちょっと、冴子ー」
2人は、じゃれあいながらファミレスを出ていき、私と美鈴はそのあとを追った。
目的の場所は案外遠いらしく電車を乗り継いでいく。
「この店は高級店が並ぶ繁華街に在って遠いのよ。乗り換え、疲れるからもっと近くにあれば良いのに」
電車に揺られつつ、万里子は言ったが、表情はにこやかだった。