壊れた美少女と殺人ナイフ-2
――仕方ないわ……今日また探そう…
――トントン
ノックがした。
とっさにナイフをしまう。
息を整え、部室のドアを開けるとポニーテールの少女がいた。
「こっこんにちは。あっ、あの橘さん。あのね、今日空いてないなかな?」
「……今日ですか?」
即座に猫をかぶって返答する。恐らくクラスメートの一人だろう。後ろに何人かの女子生徒が待っているあたりを見るとわざわざ私を呼びに来たらしい。
――昨日は楽しみ逃がしちゃったし、女と遊ぶのもね…
断ろうと口を開く前に――
「合コンするんだよ」
「合コン…?」
女子高校で合コンはよくある話だった。
「うん。でね結構美形もいるしきっと橘さんが気に入る子いると思うから来ない?」
「…美形…?」
「あの、部活で忙しいかな…?」
不安げに聞く少女。その不安が伝わったのか後ろで待っていた娘達も静かにこちらの様子を見てくる。
――美形いるのは探す手間省けてよしとして……証拠が残る可能性があるわね……
考え、ため息をつく。現実的には危険要素が多く行かないのが得策だろう。だが…だが――
――まぁ、たまにはスリルも必要よね…
「私が行っても大丈夫?」
「うん、全然大丈夫!!」
少女の顔が一気にほころぶ。
「じゃぁ、よろしくね。えっと…」
「あっ、やっぱり分かりませんか…」
少女が残念そうな顔をする。
「ごめんなさい。あまり名前覚えるのは苦手で」
「気遣いしなくていいです…あの、影薄いのは分かってますから……」
少女は悲しい顔をしつつも、笑顔を見せる。
「私、早乙女 美鈴です」
「早乙女さんですか…。私は橘 愛です。よろしく」
「は、はい。よろしくお願いします」
少女はなぜか顔を真っ赤にする。
「……じゃぁ、早乙女さん。行きましょうか」
「は、はい」
不思議に思いつつも、少女と共に歩きだした。
近くのファミレス。夕焼けが闇になりはじめた時刻。
4人の女子高校生がいた。
愛は目の前に座る美鈴に紹介された2人の女子――秋葉 万里子と木崎 冴子を見る。
茶髪で制服を着崩した少女を万里子。
美脚を惜しげもなく露出し、スカートを超ミニにしている少女を冴子。
「今日はなんと超ー高いお店『キャットナイト』で合コンしまっす!それもこれも美少女橘さんのおかげです!はい拍手!」
茶髪少女が言う。どうやら仕切り役のようだ。
まばらな拍手が起きる。実際、拍手しているのは美鈴だけだったが。
茶髪少女は無視し説明を続ける。
「さて、今私たちがここにいるのはこの合コン、もとい戦を勝ち残るための作戦を考えるからです!」
ハイテンションな茶髪少女。周りから視線が集まる。隣にいる冴子はいつものことなのか平然としている。