やっぱすっきゃねん!U…A-5
「ひっ!ふっ!ふっ!」
最初はリズミカルにこなしていた佳代。だが、50回を越えたあたりから足が震えだした。
「ハアッ!…ハアッ!…」
70回あたりからは動きもゆっくりで、1回、1回が止まるようになった。汗はポタポタとグランドに滴り、口を大きく開けて空気を吸う様は金魚のようだ。
そして、ようやく100回を終えて安堵していると永井の口から、
「次は四股を100回!やり方は藤野コーチを真似しろ」
(ええ〜、まだやるのォ…)
佳代は内心イヤになってきた。
一哉は皆の前に立つと、大きく脚を広げる。
「いいか。足幅は肩幅より少し広く、爪先は出来るだけ外に向けろ」
部員達は真似て足を拡げる。
一哉は次の動作をまじえながら、動きを説明する。
「そこから、ゆっくりと片足を上げて、ゆっくりと降ろす」
全員が真似て片足をゆっくりと上げる。が、これが結構難しい。体勢を崩さないようバランスを取ると、軸になる足に背中、それとオシリの筋肉を使う必要がある。
それに、片足を上げる毎に股関節辺りに痛みが走る。
これには一哉も加わった。
一哉の号令の中、部員達はおぼつかない動きで四股をこなした。
その後、腕立て伏せ、腹筋、背筋、そして30メートルダッシュを10本こなして、ようやく2度目の休憩となった。
すでに陽射しは高くなっている。校舎の時計を見つめると、すでに11時を回っていた。
(2時間も体力使いっぱなし……)
さすがに驚いた佳代。すでに身体は、今までの練習より疲労し切っていたのだ。
ー正午ー
「…つ…掴めない…」
ウィンナー炒めがうまく掴めず、困った顔をする佳代。
昼食の時間。部員達は体育館の裏にある木陰に入り、弁当を展げていた。佳代にとって待ちかねた時刻なのだが、困った事が起こった。
午前中の練習だけで腕の力を使い果たし、指が震えて箸がうまく使えないのだ。
昼休み前の練習もハードだった。
まず素振り。今までの倍の200回。それも、足を大きく広げて。足を踏ん張るので下半身が固定され、自然と上半身の真ん中、軸を中心にバットを振るようになる。
次は、30メートルの距離にジグザグに置かれたプラスチックのカップを、素早く順番にタッチして俊敏性を高めるトレーニングを20本。
最後に、大型トラックのタイヤにかけた30メートルほどのロープを、腕だけで手繰り寄せるトレーニングを1人10本。
それらをこなしたところで、1時まで昼休みとなった。