やっぱすっきゃねん!U…A-10
「イッテ〜…」
頬を押さえ、虚ろな目で佳代を見つめる直也。対して佳代の方は、〈してやったり〉という満足気な表情で、
「ざまあみろ!!このセクハラ野郎!」
「テメェッ!誰がセクハラ野郎だ!カチカチのモモしやがって」
直也も掴み掛らんばかりの勢いで、言い返す。が、佳代も負けていない。もう一発平手で殴ってやろうとする。
「ナオヤもカヨも止めろって!」
直也を橋本が、佳代を山下が後から抱きついて止めている。
すると、信也の平手が2人の頭を捉えた。
「いい加減にしろ!!ケンカしてる場合じゃないだろう」
我に返った2人は、イタズラを咎められた子供のように俯いた。
集まった部員達も列に戻って行く。直也と橋本も列に戻ろうとした時、
「アンタ、いつまで触ってんの?」
佳代は、不愉快極まりないといった表情で山下を見た。
「エッ?いつまでって……!!」
その瞬間、山下は凄い勢いで佳代から身を剥がす。直也とのケンカを止める際、彼は佳代の胸元を掴んでいたのだ。
いつもは沈着冷静な山下が、この時ばかりは顔を赤らめ、焦った表情で、
「す、スマン!わざとじゃないんだ。事故だから」
「当たり前だぁ!わざとだったら痴漢だろ……アンタといい直也といい、ここはセクハラ野郎の集まりか……」
佳代は隠すように胸元を押さえながら、自分の列へと戻って行った。
ー夕方ー
直也はひとり帰ろうとしていた。今朝の事で、佳代は一緒に帰らないだろうと思ったからだ。
冷静なって考えれば自分が悪いと分かる。だが、それを素直に言えずにいた。
いつもより重い足取り。
その時、後から声が掛かる。
「なにひとりで帰ってんだよ」
声の方を見る直也。佳代が自転車を押して近寄って来る。
直也は困った表情で、
「…いや…オマエ今朝の事…」
「今朝の事って…アレはあそこで終わったハズじゃないの?」
「ま、まあ…そうだけど」
戸惑う直也に対して、佳代はニンマリ笑うと拳を向けて、
「今度セクハラやったら〈グー〉で殴ってやる」