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道。
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道。-2

なら何のために争う。 
アガルタロスの価値は。
争い続けた歴史の細く長いこの道の価値は。 
一体… 

そして連絡が入った。 

今夜奇襲に入る。 

本格的なバノンレ侵攻と奇襲で、敵軍を恐怖、不安、驚愕に陥れる作戦。 

夜はまだ遠い。 
おれの中のこの違和感と異物を取りのぞかない限りは参戦しても在るの死のみだろう。 
いや死よりも悲惨なのは死せる生。 
すなわち思考の死に他ならない。 
指令であっても自分が納得できなければそれは自分で責任を負うことに直結せず、そんなものは生には程遠い。 
今やアガルタロスの内乱で誰もが何か大切なものを亡くし、
不完全な生の灯火に陰が忍び寄る恐怖に怯えていた。 

駒を差すだけの者にはわからない苦しみ、やり場のない怒り。 

もしもこの奇襲が成功した所で万人が幸せになるだろう解決への道にはたどり着くことなど出来ないのはこの場にいる誰もが承知の事実である。 
 
そして空は青い。 
 
こんなに澄み切った青の下なのに、ここは戦場。
本当は青くなくくすんだ灰色をしているのかもしれないが、今のおれにはそれが澄んだ青いに映っていた。 
詰まるところアガルタロスを手に入れた結果がまた新たな争いを生み出す過程としかならない。 
安息の地、アガルタロス。 
聖地アガルタロス。 

いっその事、両軍の上層部を打ち殺して幕引きとしてその後の混沌をすべてが受け入れた方がいいのではないかとも考えてしまう。 
愚かな選択肢しか残されていない。 

おれ自身も何がしたいのかわからない。 

きっと報道されたこの場面を見た平和の国の住民にもわからない。 
マスゲームの愚かさを当事者がわかっていても、匙を投げないこの現状では。 
昔見た欧米の映画の中には完全な白である正義と、対照的な漆黒の悪という構造の勧善懲悪の三文劇場が繰り広げられていた。 
白が黒を倒す簡潔なシナリオであれば、すべて納得のいく終わり方もあるだろう。 
だが、すべてが灰色の我々には簡潔なシナリオも納得のいく終わり方もない。 
もしも神が存在するのであれば、その真っ白な意思と厳格な鉄槌ですべてを無に変えてしまえばいいのに。 
あの陳腐な三文劇のように。
そんな心境だからこそ、空の青さが感じさせた。 
生きる罪悪感を。 
奪う罪の十字架を。 


「我々は殺しあうのが目的ではない。
これは消耗戦である。
敵軍に恐怖を与え、真の平和を築こう」

などという薄っぺらなスローガンに踊らされ続けてきたが、もう我慢の限界でもある。 

突然雨が降りつける。

夜よ訪れるな。 
人の子よ。 
これ以上罪を重ねるな。 
そんな空の声が聞こえるかのようだった。 
いや、自分の叫びが投影したのかもしれない。 


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