reality ability‐第5話‐西の洞窟、death cave‐-9
「‥‥俺は?‥‥」
誑笥が気が付いた。仰向けになっていた事と身体の傷もない状態で岩の上に眠っていたようだ。
「“記憶の欠片”は貰っておく。」
「なっ!?」
皇希がいつの間に居て、手には“記憶の欠片”である首飾りを持っていた。
「‥‥奴らは?」
「手下は倒した、いや、解放させたと言った方がいいか。‥‥“カオス”の直属の部下は逃げた。」
皇希は何もなかったように言った。余裕だったんだろう。また、皇希は壁の文字を見ていた。
「‥‥解放?‥それに読めるのか?それを?」
誑笥は2つの疑問を皇希に投げつけた。
「‥‥お前が倒そうとしていた者は手下の怨念や憎悪を、幻想具現化と幻想の力によって復活した者。身体を崩壊させても意味がない。」
皇希は何処か悲しげだった。理由は解らない。
「‥‥‥」
誑笥は真剣な表情で辺りを見ていた。再度、戦闘不能にならない者が攻めてきたらと思うと、誑笥は心配でいるのだろう。
「大丈夫だ、もう来ない。‥‥もう1つ。‥‥この文字は、
〔無限の無を持つ者‥‥我が愛(いと)しき息子よ。私を怨んでいますか?私を殺したいですか?貴方ならそれが出来る。したいならしなさい。ただ、愛する者を裏切らない事。貴方は愛されているのだから。〕
‥と。」
皇希の表情に変化はない。それに内容の意味が変だった。まるで未来が見えていたような内容を書かれた。
「‥‥お前の事か?」
当然の一言である。誑笥は鋭い眼差しで皇希に言った。元々、洞窟は皇希の“記憶の欠片”が置かれている場所だから。
「‥‥真実を知りたければ、集神城まで付いてくるんだな。」
皇希がこの言葉を言った後に、足元に魔法陣が浮かび上がった。何をする気だろうか。
「‥‥【真】よ。我が命(めい)に応えよ。この幻想に“真”の解放を‥‥」
皇希は静かに唱えた。すると、魔法陣が荒々しく輝きだす。と同時に、皇希の背中の刻印が共鳴したように輝いた。
「‥‥??」
誑笥は呆然と見ているだけだった。何が起きるのか、全く解らない。
「‥‥‥」
皇希は静かに目を閉じているだけだった。すると、皇希を中心に辺りに眩い光によって白く包まれていく。