reality ability‐第5話‐西の洞窟、death cave‐-11
「‥‥‥」
皇希は無言で顔を隠しながら歩く。誑笥に何かを悟られないように‥‥。
「‥‥‥」
《しかし、あの洞窟はどういう仕掛けなんだ?‥‥ちっ!本物以上の出来だったぞ。‥‥》
誑笥は皇希の背中を見ながら、そんな事を思っていた。
「‥‥昔‥‥」
前を歩いている皇希がポツリと言う。
「‥‥なんだ?」
誑笥は睨むように皇希の背中を見た。
「‥‥昔の出来事だ。ある“神”が“この世界”にやって来た‥‥」
「??」
皇希は立ち止まり、話を続けた。誑笥も立ち止まり、きょとんとした顔で皇希を見ていた。皇希は更に続けて喋る。
「‥‥その神は“自分がいた世界”の根源と同等の“モノ”を一緒に持ってきた‥‥」
「何を言っている?」
「‥‥その神はその“モノ”で“子”を創った。“人間”や“天界神”、“冥界神(めいかいじん)”、“獄界神(ごっかいじん)”でもない者を‥‥その“子”の為に洞窟を“幻想の力”で創った‥‥」
「おい‥‥さっき何を言っているんだ?」
誑笥の言葉に耳を貸そうとしない皇希だった。更に淡々と喋り出す。
「‥‥だが、その“子”は時が経とうとも“肉体”が出来なかった。理由があった。膨大なる魔力や全てを知る知識を宿さないといけない“肉体”があるはずがない‥‥」
「‥‥‥」
誑笥はとうとう無言になり、真剣に聞き始めた。
「‥‥しかし、ある出来事が起きた。10万年前の“集神城襲撃事件”‥‥」
「‥‥‥」
「‥‥神城 凰輝の地界落下により、その“子”は凰輝と同時に地界に降りた。そして、凰輝の代わりに地界で育った‥‥。こんな話は信じられるか?」
皇希は振り返り、真剣な眼差しで誑笥を見た。
「‥‥それは無理だな。俺はそんな事を知りたい訳じゃない。どうでもいい事だ。」
「‥‥そうか。」
皇希は西門の方に向き、歩き始めようとしたが、誑笥の言葉で止めた。
「しかし、いきなり俺に言った理由は?」
誑笥はその理由が知りたかったようだ。
「“冥界神”は天界にも獄界にも自由に行けないんだろ?お前はその事がきっかけでこの戦いに身を投じたはずだ。」
「‥‥‥」
皇希は空を見た。その瞳の内には悲しい光があったかもしれない。誑笥の顔は少し悲しくなったように見えた。