reality ability‐第5話‐西の洞窟、death cave‐-10
「うわっ!‥‥なんなんだ?この光は‥」
誑笥は当然の事に驚くが、直ぐに落ち着く。
「‥‥大丈夫だ、害はない。‥‥静かに待ってろ。今に“真実”が解る。」
皇希は水も凍るような冷たい口調だったが、誑笥は睨むだけだった。‥‥どうやら、敵対の関係はまだあるらしい。
「‥‥わかった。」
意外に素直な誑笥だが、理由があった。それは皇希から放たれている雰囲気が恐ろしく“死”への暗示を放っていたからだろう。
数分後、輝きは小さくなっていく。
「‥‥!!」
誑笥は目を開けた。不思議な事だった。開いていたはずの目を閉じた覚えのない誑笥は混乱していた。また、仰向けで倒れていた。
更には洞窟内であるはずなので、空は見えない。が、誑笥の瞳には橙色の空が映し出されていた。
「‥‥醒(さ)めたか?」
皇希は立っていて近づいてくる。普通の表情だった‥‥。これが当たり前だという表情。
「ここは?‥‥!!」
誑笥は立ち上がると、更なる驚愕が待っていた。それは、誑笥と皇希の立っていた場所は何もない荒地だったからだ。
よく見るとセンターサークルの西門もあるのが解る。また、壊れた武器や腐敗した血の匂いすら無くなっていた。
「これは‥‥どういう事だ!?知っているんだろう!?教えろ!!」
誑笥は皇希の服を掴みながら激しい口調で言った。誑笥の目は皇希を確実に睨んでいた。
「‥‥離せよ?殺すぜ?‥‥」
「っ!?」
皇希はいつもとは違った雰囲気で誑笥を睨み付け、冷ややか口調で言った。いつの間にか、剣を右手で握り締めていた。
誑笥は皇希の殺気や雰囲気に負け、素早く身を退いた。数歩、下がって皇希に問い掛ける。
「お前‥‥何にイラついているんだ?」
誑笥の言葉は皇希に極度の動揺を与えた。
「!‥うるさい!貴様に何が解る!?」
皇希は表情を隠し、西門へと歩き始めた。感情的になることが珍しい皇希なのだが、さっきから感情が隠せてなかった。
「‥‥‥」
誑笥は皇希の行動や口調に驚きはしなかった。真剣に考えていた。
《‥‥これがアイツの“感情”だというのか?‥‥だとしたら、意外だな。“人間”じゃないのにまるで“人間”だ。‥‥いや、当たり前か。》
そう思いながらも、誑笥は皇希の後を追うように歩き始めた。