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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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Need/-ed-8

「怪我人です!ひどい怪我なの…血が…!場所は…!」

半ば泣き叫びながら言う私の耳に、彼がこういうのが確かに聞こえた。

「助ける必要など…僕は君の妹と…父上の……仇なのに…」

わかってる。そしてその後には、お決まりの…

「人間というのは…面白いな。」

そして、風炎の意識が途切れた。





“嫉妬のうちには、愛よりも自愛のほうが多く潜んでいる”と、ロシュフーコーは書いた。憎しみもそうだ。あるいは、全ての感情が。

自分がどれだけ不幸だか、得意げに自慢する類の人間を見ては嘲笑していた。自分がどれだけ不幸か他人に話して慰められて、それで満足できるなら何て幸せだろうと。でも違うのだ。

その人も、今手にしているこの剣も、不幸である自分を好いていたのだ。誰かを憎んでいる自分が、愛しいのだ。本来の自分を見失ってしまうほどに。

―そして、自分と彼らの、一体どこが違っていたというのだろう?



二人してお腹に穴を開けられるなんて…笑えない冗談よね。

病院の、蛍光灯の明かりだけでは照らしきれない暗い雰囲気が、重くのしかかっている。手術室で処置を受ける風炎と、それを待っているあたしが座る椅子のあるこの廊下を隔てるものは、あの重そうな金属の扉ただ一つだけのはずなのに、二つの空間は、まるでそれぞれのパラレルワールドであるかのように今は完全に別々だった。

―さくらには、嘘をついた。

ちょっと怪我をしただけよ。何針か縫えば治ると思うけど、数日は入院しなきゃいけないみたいだからさ、明日は学校休むね。

病院の場所は教えなかった。教えれば、きっと見舞いに来る。見舞いに来れば、何が起こったのかを知って、きっとまた無理をするのだ。あたしを、元気付けようとする。

それは、今はどちらにとっても不必要なことだ。



手術室から出てきた医者が、手術の成功を告げたとき、あたしは有難う御座います、と心から告げた。



“有難う御座います、私が心から必要とする人を、救ってくれて。”



目を覚ました風炎は、麻酔のせいで回らない呂律(ろれつ)で言った。

「茜…いてくれたのか…」

あたしはうなずいた。風炎は何時間も眠り続け、あたしは学校を二日休んだ。ゆっくり睡眠をとったおかげで、風炎の怪我は医者も目を見張るほど早く回復した。おそらく、これが狗族の力なのだろう。


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