わたしと幽霊‐痛み‐A-4
「あら驚いた…あなた霊体触れるの。初めて見たわ、凄いわね……っと」
更紗さんが、こちらに向き直った。
「私達だけになったわ。何か話があるんでしょ?」
髪をかきあげる。
ひとまず高谷さんの視線が痛い…
――ええっと。
女の子同士の話にすっかり入り込んでたあたしは、慌てて意識を切り替える。
「あの…単刀直入に言うね」
うーん…これで良かったのか、もっといい案があったんじゃないか――
今更沸いてきた、そんな小さな後悔を押し退けて言葉を続ける。
首を傾げて、落ち着いた表情であたしの言葉を待つ彼女の目を見た。
「…亜子からあたしに移ってほしいんだけど」
――少しの間。
『…………は?』
更紗さん、高谷さんの声が見事にハモる。
「だだだって、確かに更紗さん悪いことそんなにしてないけど亜子の体は亜子のものだからよくないってかつまりえっと…」
慌てるあたしを、穴が開きそうな程にじっと見つめる更紗さん。
「お前な…」
額に手を当てて嘆息する高谷さん。
二人に挟まれ、あたしは小さくしぼんでいく。
更紗さんがちらりと高谷さんを見上げた。
「あのケイが…何であんたを選んだのかが分かったわ」
くすくすと優しげに笑う。
……??
えっと…よく意味分かんないし…
とっ…とにかく!!
「で、でも、その前に一つだけ知っておきたいの!」
「なぁに?」
あたしは深呼吸した。
「更紗さん、あなたが…ここに『居る』理由…」
そう言った、その瞬間。
ざぁっ…
――風もないのに、そんな音をたてて、その場の空気が一変した…そんな気がした。
見ると、表情の抜け落ちた、更紗さんの強い眼差し。
高谷さんに言い含められて…きっとあまりにも惨く哀しい事があったんだろうって、分かってる。
でもあたしだって、もう腹はくくってきたんだ。
恐くないといえば嘘になるけど――でも。
あたしは知りたい。
更紗さんを、知りたい。