わたしと幽霊‐痛み‐A-2
「私じゃないわよ?やったのは、ケイ」
高〜谷〜さ〜ん〜…?
「お前…親友を心配する気持ちは解るが少し落ち着け」
高谷さんは冷静に言い、あたしの横に歩み寄る。
「更紗、お前もいい加減にしろ」
「…………」
静かな威圧感に、しかし彼女は拗ねたようにふぃっ、と顔を逸らした。
「…あ〜今日はなんか興醒め。じゃね〜」
少し居心地悪そうにそれだけ言い残すと、彼女は保健室から姿を消してしまった。
まったく、何なのあのヒト!
ぶつぶつぶつ…
「おい、根に持ってる暇があるなら、今後の対処法を考え…てもどうしようもないがな。説得に応じるような奴じゃないし」
子供をあやすような口調で、ぶつぶつ呟くあたしの横を歩く高谷さんと、家に帰る道程。
ん…対処法はないこともないんだけど。
一応これまでずっと、考えてたんだ。
でも。
その前に、知っときたい。
あたしは気を取り直して高谷さんに聞く。
「ね、高谷さん」
「ん?」
さっきまで呆れてた眼鏡の奥の眼差しは、今はもう思慮深い色に戻ってる。
「あのね、更紗さんのコトなんだけど。知り合ってけっこう長いの?」
「まぁ…死後初めて遭った奴だからな」
あ、そぅなんだ。
「じゃ、知ってる?彼女がこの世に居続ける理由…とか」
そう、言った瞬間。
鈍感なあたしにも何となく分かってしまった、微妙な間。
「んー…」
知ってるんだ。
「あいつに悪いから、とかそういう訳じゃなく…」
いつもキッパリハッキリ高谷さんが、珍しく言葉を濁す。
んと…結構壮絶とか…?
ちょっぴり後悔めいたものを感じながら、高谷さんの次の言葉を待った。
「言いたくないな…お前は知らない方がいい」
前方に顔を向けたまま、そう言い切った高谷さんの横顔。
この顔してるときは何聞いても教えてくれないの…あたし知ってるから。
今は聞くのをやめることにした。
そしてそれからも更紗さんは、亜子の体で好き放題やってる。(汗
あの件の直後しばらく観察してたけど、その…ああいう系?の遊びはしなくなったみたいだから、一先ずは安心してる。