SLOW START Z-6
…可愛い…
「ユウキ君は感受性が豊かなんだよ」
「そっかなぁ〜って晶ちゃん笑ってんじゃじゃ〜ん。やっぱり涙脆い男はダメだよなぁ。」
私は素直に可愛いと思った。
感情を素直に出せる人は素敵だ。
…ユウキ君って本当先輩とは正反対…って何考えてんだろ!
ユウキ君といても先輩を思い出すなんてダメだ!と自分に言い聞かせて席を立った。
映画館を出ると外はもう暗くなっている。
吐く息が白くなった。
「「冬だね〜」」
ユウキ君とハモるのはこれで二回目だ。
顔を見合わせて笑った。
「ずいぶん気が合うね〜俺ら」
「だね〜前世は双子かも」
「…双子かぁ…恋人のがいいなぁ俺は…」
「ん?何か言った?」
ユウキ君の言葉が車のクラクションで聞こえなかった。
「ん〜ん!何でもないよ。晶ちゃん腹減った?」
「まだあんまり…」
時間は17時。ユウキ君はしばらく考えた後、提案した。
「じゃあさ、ちょっと遠出しちゃうけど川崎行かない?」
「川崎?って神奈川だよね?」
「そう。ラウンドワン行って運動して夜飯ってどうかなって」
「いいよ。川崎かぁ〜初めてかも」
「よし!じゃあ決まり!」
私とユウキ君は川崎へ向かうため駅へと歩いた。
駅の中は日曜にも関わらず働く人の帰宅ラッシュで混み合っていた。
ホームで電車を待つ。
電車が来てドアが開く。
降りてくる人にぶつかられ転びそうになった。
「おっと!大丈夫?」
とっさにユウキ君が私の手を握って支えてくれた。
「うん。ありがと…」
そのまま電車に乗り込む。人の壁に押されるように反対側のドアまで行ってしまった。
ユウキ君は、かばうように手を握りドアと自分の隙間に私を避難させてくれた。
線の細いユウキ君が意外とたくましい…
ドキドキして顔を上げられなかった。
…いきなりこんな密着ってドキドキし過ぎて死んじゃう〜
川崎か…なんか楽しみだな。
つづく