SLOW START X〜田山拳〜-2
そんな時、あいつの様子がおかしい事に気付いた。
携帯を見てニヤニヤしていたり、どこか上の空だ。
昼休みから帰って来てさらにおかしくなっている。
俺は何があったか聞き出すために晶を飲みに誘う。
いつもの居酒屋、いつもの席、いつものビール。
変わったことはない。
ただ一つ…携帯の気に仕方がおかしい。
軽く聞いてみる。
…外か…
会社内の男はガードしていたが外部からくる男は考えていなかった。
考え込む俺を不思議そうに覗き込んでいる晶にたまらなくなり居酒屋を出た。
…先手必勝だ。
俺は晶に告白すると決めた。変な邪魔が入るのが嫌だったので家に呼んだ。
二人で家に来るのは初めてではないが決意が緊張を生む。
録画していたお笑いを見ていたが内容は頭に入らず、とりあえず笑っていた。
そうこうしていると晶が横になり眠りかけていた。
拍子抜けしてしまった俺はブランケットをかけてやろうと思い、腰を上げた。
その時、あいつの携帯が震えた。
起こしてしまうと思った俺は携帯を開き止めようとした。
画面には…
ユウキくん
着信
080…
俺は携帯を耳にあて通話ボタンを押していた。
『あ、もしもし晶ちゃん?ごめん。もしかして寝てた?』
「…」
『晶ちゃん?』
「…晶は今寝てるんすけど」
『え…っと…あの?』
「晶寝てるんで。じゃあ」
ブッ!!
なんで出たのか自分にも解らない。ただ晶から聞いたあの名前に危機感をおぼえたのだ。
俺はユウキという名を履歴から消した。
…最低だ…何してんだ俺…
自分の小ささにへこむ。
泣きたい。
晶が寝返りをうち、こちらを向いた。
晶は何も知らず眠っている。
晶の寝顔に安心しそっと触れてみる。
…晶があいつのものに…
そう思うと今まで我慢していたのが一気に崩れ落ちる音がした。