闇よ美しく舞へ。 6 『むじな』-1
”野生だっ! 獣だっ! 俺はオオカミになるのだっ!!”
『タァーーッ!』
”バキッ! ドタッ!”
「なにこいつ? 頭おかしくない?」
突然背後から襲い掛かって来た若い男を殴り倒して、気を失ったらしい相手の顔を覗き込みながら、美闇(みやん)は訝しそうに眉を顰めていた。
「最近こう言う変なう奴、多いよね。どうするこのまま地獄とかに流しちゃう」
連れ添っていた美闇の友人『白嶺(はくれい)』もそんな事を言いながら、うつぶせに倒れている男の背中を指で突っついたりする。
「そうしてやりたいけど。地獄に流すのはわたし達の仕事じゃないし。第一それじゃぁ面白くなさそうだわ」
「それもそうね」
美闇と白嶺は互いに顔を見合わせると、男の両腕を互いに掴んで、なんだか意地悪げな笑いを漏らしたりする。
美闇は目を閉じると、何やら呪文めいた言葉を口にした。そうして再び彼女が目を開けた瞬間、辺り一面に真っ暗闇が広がり、闇は美闇たち3人を飲み込んで、そして消えた。
*****
目の前に可愛い女の子が居ると、どうにも堪らなくなるらしい。急ぎ静かに女の子の背後に近づくと、男はいやらしい目つきで持って舌なめずりなどする。そうして、これまたいかにもと言ったいやらしい手つきでもって、前を行く女の子のお尻を触ったりもする。
「きゃっ!」
この可愛らしい悲鳴が堪らない。男はそんな事を感じて、興奮すら覚えていた。
すると。
「なにすんのよこの弩変態!」
お尻を触られた女の子が怒って、振り向きざまに鉄槌を繰り出して来たではないか。
男はそれを難なく交わし。
「えへへぇ。怒った顔も可愛いぜベイビー」
などと、わざとらしくふざけて見せたりもするが。
「うっうわーーー!」
女の子の顔を見るなり、突然驚きの声を上げると。慌てふためいた男は、その場から急ぎ逃げ出していた。
〜〜〜〜〜
血相を変へ、息をも付かず走る男。幾つかの角を曲がって、暗い街角の中に明々(あかあか)と灯りを灯す一軒のコンビニエンスストアーを見つけると、男はその店内へと飛び込んで行った。
深夜のコンビニ店内には客は無く、恐らくアルバイトなのだろう、茶髪頭の若い店員が一人居るだけだった。
男はコンビニへ飛び込むなり、その茶髪頭の店員に向って。
「出たっ! ででででっ出たんだよっ!!」
と告げる。
だが店員は、我感ぜずの構えだったりして。男に背を向けたまま、何食わぬ仕草でレジの後ろにある棚に、ダンボール箱から出したばかりのDVDを一つずつ、陳列していた。
それでも。
「何かあったんすか?」
と、機械的な声を発し、飛び込んで来た男に返事を返していた。
男は。