真昼の月。-1
ぐるぐる巻きの
マフラー。
雁字搦めの
感情。
人混みの、最前列。
スクランブル交差点。
信号が、変わるのを
待っている、あたし。
唐突に、動き出す
人の群れ。
『青はススメ。』
動けないあたしを、
押すように、
人、人、人。
こんなに、
たくさんの、
人が、
居るのに、
あたしは、
誰とも、
交われない。
欠陥ばかりの、
あたしは、
上手く、
笑えない。
点滅し始めた、
信号を尻目に、
立ち止まったまま、
一月の、
寒々しい、
空を、見上げた。
凍えるような、
真昼の月。
誰にも気付かれず、
こっそりと、浮かぶ。
あぁ。
世の中は、
白々しくて、
嘘っぽくて、
弱々しいものばかり。
冷たい風が、
肌を刺して、
いつの間にか、
点滅をやめた信号は、
当たり前の様に、
平然と、
意味を、変える。