真昼の月。-2
『赤は止まれ。』
それが、
とても、
馬鹿馬鹿しく、
感じた。
当たり前だと
思っていた、
ルールが、
唐突に、
意味を、失い、
崩れ去った。
あたしは、
赤信号を前に、
ひどく、
前進したい、
衝動に駆られた。
その先に、
あるものを、
掴める、
気が、した。
動かなかった足が、
やっと
前に進んだ。
車の、
クラクションが
とても、
耳に痛かったので、
あたしは、
耳を塞いだ。
現実を、
見るのが、
とても、
痛かったので、
あたしは、
視界も、塞いだ。
瞼の裏に映った、
真昼の月は、
やっぱり、
白々しくて、
嘘っぽくて、
とても、
とても、
弱々しかった。
何も聞こえない世界。
何も見えない世界。
あたしに、
静寂が、訪れた。
あたしは、たぶん。
『真昼の月。』
に、なるんだ。
唐突に、
そう、
思った。