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間−ハザマ−
【悲恋 恋愛小説】

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間−ハザマ−-6

「…何?」
私、顔を上げずに答える。
「ちょっと…いい?…」
そう言って外へ連れ出された。
「…何?」
今度も顔を見ないまま言った。
「俺…ごめん!!本当!!」
私、横目で平沢をちらりと見た。平沢は深々と頭を下げている。
―バカみたい…
ふいに私のお腹の下の方から何かが突き上げてくる。
―…違う…違う…私は傷つかない!!ゲームじゃん、私だけは傷つかないはずでしょ…
「武田…俺…」
―やめて…
「俺さ…」
―違う…もうやめて…
平沢の声に反応するように何かが溢れだしていく。
「…かないで…」
―いや!!違う!!
「…行かないで…」
―違う!!やめて!!
「行かないでよ、好きなの!!」
すんなり出た言葉は、あやふやだった私の気持ちをくっきりと形にしていく…
―そう…好きなの、好き、平沢が好きなの
自分に酔ってるだけかもしれない…でもそんなことはどうでもいい…
「横山さん、昨日男に振られてた。だから平沢のとこに戻るんだよ。あんな女…」
「知ってるよ…」
「え……」
「いいんだよ、それでも」
「だって、そんなの、どうして?」
「好きなんだよ!!それでも…キープだってなんでもいい。俺のとこに帰って来れば…」
「…そんな…そんなのひどいよ、ひどいじゃん、横山さんひどいよ!!」
「あいつを悪く言うなよ!!」
「でも」
「正直、俺は誰でもよかったんだ。寂しくて、だから武田じゃなくても誰でもよかったんだよ!!」
−え
私の思考は、ショートしたかのようにプツッと切れた。
「………」
「………」
長く沈黙が続いく…
ショートしてしまった私の頭には言葉が何も浮かんでこない。言葉の代わりに涙が溢れ出す…
―こんなの…私じゃない…
本当に長く続いた沈黙の後、平沢がつぶやくように…ささやくように言った。
「…俺…もう…行くわ…」
私は平沢を見ることが出来ず、遠ざかる足音を必死に追っていた…

あれから半年、私は看護学校へ入学した。
平沢達は別れたと風の噂で聞いたけど、私はあれから一度も会っていない。
私は本当に平沢が好きだったのか、今ではもう分からなくなってしまった…あの頃の私は、すっぽりとどこかの間に、はまっていたように思う。そこから救い出してくれたのは、確かに平沢だ。だけど、私も平沢と同じで、誰でもよかったのかもしれない…
今日はいい天気だ。気分がいい。だから学校帰りにケーキでも買って帰ろう。そう思いながら私は、いつもの電車に飛び乗った。


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