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間−ハザマ−
【悲恋 恋愛小説】

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間−ハザマ−-5

その夜、進路のことで父親とケンカして家を飛び出した。
―ムカツクッ!!私の人生なんだから関係ないじゃん!!私だってちゃんと考えてるわよ!!何も知らないくせに頭ごなしに、えらそうに!!
…違う。本当はお父さんの言うとおりだった…だから腹が立ったのだ。
―……なによっ、…なによ…
私は人通りが多い駅前に来ていた。
色んな人がいる。目の前を通り過ぎて行く人達をぼんやりと見つめていた。そんな私の目にふと横山さんの姿が映った。
―あれ?横山さん…と平沢?…じゃない
横山さんは平沢じゃない違う男といる。
私、会話が聞こえるくらい近づき、そっと聞き耳をたてた。
「…どうしてもだめ?」
横山さん、男の腕をそっと握った。
「ごめん、やっぱり友達としてしか見れないよ…ごめんな」
その男、横山さんに優しくそう言った。
―…ふーん…そういうことか、男がいたんだ…だから平沢にあんなこと言ったわけね…
私、二人に背を向け歩き出した。
―私と会ってたからなんて、都合のいい理由で平沢振って…結局新しい男がいたからじゃない
私、携帯を取り出し平沢に電話しようとした。その時携帯が震え、画面に平沢の名前が映し出される。
ドキンー
―びっびっくりしたー…
だけど、私の心は踊る。
「も、もしもし…」
声が震えないようにゆっくりと言った。
「武田?今何してんの?俺、ちょっと外出てるんだけど…出て来れない?かな?…」
―…もう…やだ…
平沢の声が耳に響く…そのたびに私の心臓はぎゅっと収縮を起こす。
「…今…私も外だよ…駅の近く…」
呼吸の仕方が分からない…いつもどうやって、どこまで息を吸い込んでたっけ?喉の手前だけで浅い息を繰り返す。
「まじ?そっち行くから!!」
弾んだ平沢の声の後、電話は切れた。
―…これって…付き合ってんのかな…?…
私達は駅の前にあるドーナツ屋で逢った。
たあいない話しをし、太るなー…なんて思いながらドーナツを二つも食べてしまった…
「…武田といるとほっとする…」
別れ際に平沢がそんなこと言うから…
「…帰りたくない…」
私の口からこんな言葉が漏れだしていた…
そして私達はまた、ホテルに…いた…
付き合ってるの?
私の頭の中で平沢に訪ね、そんなことどうでもいいじゃん。そう思って頭の中から振り払い鼻で笑う。
平沢に会ってからずっと、それを何度も何度も繰り返している。
―…演技よ…全部…私はあの二人を壊すために演技をしてるだけよ
私は平沢の腕に抱かれながら浮かんでくる一つの気持ちに…気付かないふりをした…

明け方だった。
私が目を覚ましたとき、平沢は帰り支度を済ませてドアノブに手をかけているところだった。
「あっ…わ、悪い…起こして…」
「…もう帰るの?」
「…ん…いや…うん…」
―ん?
なんか変…
平沢は明らかに私と目を合わせない。
「平沢?…」
「ごめん…武田…俺…マジごめん」
平沢、私に背を向けたままそう言い残して部屋から出て行った。
―何?…
私、寝起きのぼーっとした頭で今の状況を理解しようとした。
―…何か…いやな予感…
急に頭がはっきりして目が覚めた。ざわざわと胸騒ぎがして、私は平沢を追った。
平沢はすぐに見つかった。駅の前にいたから…誰かと…
―誰?
わざと自分に問いかけた。だってあんまりだ。平沢の腕の中にいる女…横山さんだった。どういうこと?
何やってるの?
さっきのごめんは何?
―………
今すぐ平沢に詰め寄って問いただしたい。だけど私の足は動かない。
―…よりを戻すってこと?…
ごちゃごちゃした頭の中にやっと一つの答えが浮かんだ。
そろそろ始発の電車が出る頃だ。少ないけれど人が改札口へ入っていく。私は立ち尽くしたまま二人を見つめる。
―!!ー
その時、平沢と目があった。
私、素早く目をそらすと二人に背を向け走り去った。
―別にいいよ…そうよ…暇つぶしのゲームだし…そうそう…はい、ゲームオーバーね、もう関係ないし…
どこをどう歩いたんだろう…私は図書館にいた。開館時間に扉を開けに来たおじさんに変な目で見られたけど、待ってたの、て顔で中へ入りどうでもいい本をパラパラめくる。
「…武田…ここにいたんだ…」
どれくらい経ったときだったか、胸を揺さぶる声がした…平沢だ。


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