恋人達の悩み4 〜夏一夜〜-8
「……ごめん」
龍之介は美弥をぎゅっと抱き締めると、体を離した。
「……本当にねぇ」
ため息混じりに、美弥は呟く。
「その不安、どうやったら取り除けるのかな?」
美弥は龍之介の頭を、胸に抱き寄せた。
「私は、龍之介を捨てないから。龍之介が望む限り、傍にいるから」
「……うん」
ふわりと、風が吹き込んで来た。
「……ん……?」
頬を撫でる風のせいで半分目を覚ました美弥は、目をしょぼしょぼさせながら隣にいるはずの龍之介を手で探る。
――ぬくもりが、ない。
「……!?」
美弥は意識を覚醒させると、ベッドから起き上がった。
途端に、優しい声がかけられる。
「あ……起こした?」
僅かに開いた出窓の縁に腰掛け、龍之介は外の景色を眺めていたようだった。
「ん……」
美弥はふるふると首を振り、時計を捜す。
間違えて最初は小物入れを掴んでしまったが、ベッド脇のナイトテーブルに置いた時計は、今が真夜中である事を示していた。
「……どうしたの?」
美弥の問い掛けに、龍之介は寂しげに微笑む。
「寝付けなくて……外、見てた。大丈夫、寝てていいよ」
「……寝れる訳ないじゃない」
何度か目を擦った後、美弥はベッドから降りて龍之介の傍らへ歩み寄る。
「……ねぇ」
「ん?」
「しよっか」
ぶゥ。
龍之介は思わず吹いた。
「嫌?」
「いや嬉しいけど!でも……!」
「でも?」
「今はよ……」
夜中と続けようとして、龍之介は言葉を詰まらせる。
外からの明かりに照らされた美弥が、あまりに綺麗で……あまりに真剣な表情を、していたからだ。
「龍之介って、すけべなんじゃなくて……言葉だけじゃあ不安だから体を求めて来るのかなって、今思ったの」
ぽつりと、美弥は呟いた。
「それに……さっきの不安のせいで、眠れないのかなって」
その言葉に龍之介は、ふぅっとため息をつく。
全くその通りだった。
言葉だけでは不安を払拭できないから、体の接触を求める。
そして美弥は、それに応えてくれる。
今も自分の不安を察し、体を開こうとしてくれているのだ。
「美弥……」
窓を閉めた龍之介は腕を伸ばし、美弥をぎゅっと抱き締める。
美弥は腕の中で、溶け落ちた。
ちゅっ……
「ん……」
龍之介は軽いキスを落としながら、美弥をベッドに横たえる。
「言葉っで……不安……取り、除け、ない……なら……」
耳を舌で舐められ、体をふるふるさせながら美弥は呟くように言った。
「から、だ……っらく、から……だか、ら……ん、はぁう……!」
耳たぶを甘噛まれ、美弥は体をよじる。
「もういいよ……もう……気持ち、めちゃくちゃ嬉しい……」
龍之介は、耳元に囁いた。
それから、苦笑混じりのため息をつく。
「何かもう……ダメダメ人間まっしぐら、だな」
「な……んで……?」
「… ……」
美弥に聞こえないように、龍之介は呟いた。
「?……何?」
焦れた顔をする美弥へ、龍之介は濃密なキスを仕掛ける。
「ん……」
たちまち美弥はうっとりし、追求するのを忘れてしまった。
舌を絡ませるべく口腔内へ差し込むと、美弥は舌を伸ばして来る。
ちゅっ、くちゅ、ちゅ、ちゅぷ……
「ん、んふ……んん、ん……」
龍之介は舌を絡めては唇を離し、キスを求めて舌を伸ばす美弥の蕩けた表情を楽しんだ。
「ん……!」
ぴく、と美弥の体が震える。
深いキスを続けながら、龍之介が乳房に触れて来たからだ。
「んん……!」
パジャマの生地越しに乳首を優しくつままれ、美弥は甘く鼻にかかった声を上げる。
「あっ、あ……!」
両の乳首を愛撫しながら、龍之介は唇を顎へと滑らせた。
硬く尖った乳首を指で挟み、扱き、揉み捏ね、生地越しの微妙な刺激を送り続ける。
「ん、あぁ……あん、ん……!」
もちろん、柔らかな膨らみ自体を放っておく事もない。
龍之介は忙しく手を動かしながら、唇でパジャマのボタンを挟んだ。
舌先を使って、器用にボタンを外していく。
おへその辺りまでボタンを外すと、龍之介はパジャマをはだけた。
薄手のパジャマは美弥の体にはやや大きめで、脱がせやすい上に美弥を異常な程可愛く見せてくれる。
「あ……」
龍之介がまろやかな膨らみの頂点を舌先で嬲り始めると、美弥はぎゅっと目をつぶった。
柔らかい乳房と硬い乳首のギャップを舌で楽しみつつ、龍之介は美弥の脇腹をフェザータッチで触る。
「っ……!」
美弥は、ぶるっと体を震わせた。
空気の流れや龍之介の体温すら、今の美弥には刺激になる。
「んぁ、あ……はっあ……!」
龍之介の舌が光る筋を残しながら腹部へ滑っていくと、美弥はもぞもぞと体を動かした。