わたしと幽霊‐痛み‐@-2
「今頃気付いたのか…お前本当に馬鹿だな」
背中を向けたままの、高谷さんの呆れ声。
ぐさっ…
間髪入れず突っ込まれ、あたしのささやかな喜びは木っ端微塵になりました。
(そ…それで、マズいってなに、高谷さん?)
あたしは目を引きつらせながら頭の中で聞いた。
「ああ、まずは歩調を落としてくれ。……いや、立ち止まらなくてもいいんだが」
わざとらしく屈み込んで、靴ひもを結び始めたあたしに高谷さんが苦笑する。
いきなりしゃがみこんだあたしを、亜子は嫌な顔ひとつせず、待ってくれてる。
亜子、ごめんっ!
――そして、高谷さんの話は続く。
「この前、歩道橋の下にやばい奴が居た時あったろ」
ああ…あたしの体を乗っ取って、豚足呼ばわりした日だね。
「お前、結構根に持つのな……で、今校門の横に居る奴見えるか?あいつだ」
えっ…そうなの?
『あいつに憑かれたらひとたまりもないぞ』
その時の高谷さんの言葉が甦る。
あたしはしゃがんだまま、上目遣いで目を凝らした。
校門の横に居る奴…
探すまでもなく、すぐに分かった。
だって、制服の群れの中に、一人だけ毛色の違う人がいたから。
そこに居たのは、派手な黒のボディコンスーツ(死語)を身にまとった、なんかえらくセクシーで綺麗なお姉さん。
「物色してるなあれは」
ボソリ、と高谷さんが呟く。
物色?
「仕方ない、しばらく待ってやり過ご…」
………あ。
お姉さんこっち向いたよ?
「あらぁ、ケイじゃない!おひさ〜♪」
お姉さんは、長い髪を優雅に揺らし、こっちに向かってぶんぶん手を振ってる。
なんか、先に気付かれちゃってるし…汗
見た目から想像できる、やや低音セクシーボイスの彼女は、地を滑るようにこっちに向かってくる。
「…二人で全力で逃げろ。俺が引き止めておく」
しまった…という顔で、しっしっ、と高谷さんがあたし達に手を振る。
ええっ!?そんないきなり言われても〜!
あたしは急ぎ立ち上がり、亜子の手を…
「はぁい、スト〜ップ」
凄いスピードでギュイン、と道を塞がれ、あたしはたたらを踏む。