Ethno nationalism〜激突〜-4
フランクフルト発オスロ往きのルフトハンザ機がハイジャックされた。犯人は化粧品や練り歯磨きに〇酸や砂糖などを隠して持ち込み、それを混ぜ合わせてリモコン爆弾を作った。
機長は犯人の要求通りに機体をUターンさせると、テルアビブ空港に降り立った。
犯人の要求は、イスラエルが第4次中東戦争で捕えたアラブ人捕虜全員の釈放と、1,000万ドル分の金塊。
この時、マッケイとサタニアフが事態収拾に選ばれた。
彼らは、特殊部隊と連係して強行突破を試みた。空港整備士の格好で紛れ込み、車輪開口部から内部に侵入すると、操縦席にいた犯人の動きを神経ガスで封じ込むと、ナイフで心臓をえぐった。
犯人は、リモコンスイッチを握る間も無く息絶えた。
わずか数分の出来事だった。
「アンタからの頼まれ物、調べといたよ」
サタニアフが一枚の紙キレを差し出す。
「さすがに早いな…」
マッケイは感嘆の声を挙げ、紙キレを受け取った。
「…ウィンザーか……」
書かれた内容を見たマッケイの顔は、不気味な笑みを湛えていた。
藤田がウィンザーのアパートに来て1日が過ぎた。
彼はアパートに到着してすぐに食料品店に足を運び、数日分の食料品を買い込んだ。
ここで数日過ごした後、ロシアあたりに逃げて出方を窺おうと考えていた。
昼食を摂ってぼんやりとテレビを眺める。イギリスではわりと有名なバラエティ番組。
非日常的な内容は、これからの事を一時でも忘れさせてくれる。
その時、電話が鳴った。
オブライエンかと思い、受話器を取る藤田。
だが、それは初めて聞く声だった。
「ミスター・フジタ?」
抑揚も訛りも無い男の声。藤田はすぐに、佐伯を殺したヤツラと思った。
「お前が佐伯を殺したのか?」
単刀直入な言葉。だが、男は小さく笑いながら答える。
「ミスター・サエキとは友人だったんだ。実に残念だよ…」
「お前みたいなのが友人とはな。ブラックジョークも甚だしいよ」
男は〈フンッ〉と鼻を鳴らすと、
「まあ、見解の相違というところだな。ところで、会わないか?」
藤田は考える。
(今、奴らと会っても、必要な情報を奪われ殺されるだけだ……何か…)
「…どうなんだ?」
男は焦れているのか、返事を要求する。