Ethno nationalism〜激突〜-23
「…すべて終わったよ。これからまた、お世話になろうと思って……」
そう言って藤田は微笑んだ。
その瞬間、静代は藤田に抱きついた。
「お、おい…」
思わず驚きの声が漏れる。
が、静代には聞こえていないだろう。彼女は、流れる涙を拭おうともせず、藤田の胸で激しく泣いていた。
藤田は、無言のまま優しく静代を包み込んだ。
白い雪は、2人の再会を祝うように、しんしんと降り続けていた。
ー東京 府中ー
帰国から数日後、藤田は多摩公園墓地を訪れた。佐伯の眠る墓碑を礼拝するために。
かなり広い霊園には、政治家や教育者、芸術家と著名な人の墓碑も見うけられる。
藤田は〈佐伯家ノ墓〉と刻まれた真新しい墓碑に手を合わせると、献花と一緒にマッカランのボトルを置いた。
そして、しばらく墓碑を見つめると絞り出すような声で言った。
「…この、大バカ野郎が……」
藤田の目は赤くなっていた。
藤田 直 40歳。フォト・ジャーナリスト。
世界中の紛争地域を取材し、戦争の無益さを撮り続ける。
しかし、彼の思惑とは逆に、民族のエゴイズムによる戦争は減るばかりか、増え続けている。
…「Ethno nationalism」完…