Ethno nationalism〜激突〜-21
「元々は、イラン政府がフランスの後押しで、実験的原子炉の建造を始めた事が発端だった。
奴らは〈平和利用〉と高らかに宣言したが、そんなものは1981年のイラクを見れば、まやかしだと分かる。
我々はイランの大統領、アフマディネジャッドの側近中の側近にトップエージェントを植え込んだ。結果、イランの最終目的が核兵器を持つ事だと判明した。
そこで、この情報を友邦国のアメリカ、イギリスに伝えた。彼等は衛星による監視と外交でイラン封じ込めを行う事。そして、我々へのバックアップを約束してくれた。
アビルと軍高官をターミネートしたのは、PLFに核を持ち込む準備をしていたからだ」
(…それで携帯の盗聴が…佐伯殺害に外務省が出歯って来たのか……)
マッケイはそれだけ言うと、藤田に近づいた。
「お別れだ。ミスター・フジタ。今回はお前の勝ちだ。もう、会う事も無いだろう」
そう言うと、マッケイは右手を差し出す。その手を握った藤田。
その瞬間、藤田は床に倒れ込んだ。その姿を見てマッケイは目尻を下げて苦笑すると、
「すまないな。我々の居る場所を、知られる訳にはいかんのだ」
藤田は眠ったまま、部屋から運び出された。
「ちょっと!アンタ大丈夫か?」
藤田が再び目を覚ますと、周りをたくさんの人が囲み、彼の様子を見つめている。
目を覚ました藤田に、男が声を掛ける。
「おおっ!意識が戻ったぞ」
男がそう言うと、囲んでいる人々から安堵の声が挙がった。
状況が呑み込めない藤田。半身を起こしながら周りを見回すと、そこは彼が使っていたウィンザーのアパート前だった。
(そうか。眠ったままここへ…)
藤田は立ち上がって再度周りを確認すると、にっこりと笑みを浮かべた。
(…約束を守ったのか……)
「オイッ!本当に大丈夫か?」
男がしつこく藤田に聞いた。彼は、その男に笑顔を向けると、
「ああ、すまない。酔ったオレを友達がアパート前に置いていったんだ」