Ethno nationalism〜激突〜-20
すると一転、マッケイは声を挙げて笑い出した。腹を抱え、叫ぶように笑う姿は気が狂ったかと思わせる程に。
あまりの不可解さに藤田は聞いた。
「何がそんなにおかしいんだ?」
「アッハッハッハッ…すまん。あまりにおかしくてな。脅されるなんて初めてなんでな」
「たまには良いだろ。いつもは脅す側なんだから」
「ハハッ、マリア。フジタの拘束具を解いてくれ」
さすがのマリアも、この一言には驚いた。
「…しかし……」
戸惑うマリアにマッケイは頷くと、
「いいから解いてくれ。こんなヤツは初めてだよ。クソ度胸が有ると言うか……」
マリアは藤田の拘束具を、持っていたナイフで切り落とす。
解放された藤田は、縄の跡が残る手首をさすりながら、イスに座り直した。
マッケイはニコニコと笑いながら、藤田に語り始めた。
「お前を自由にしてやる」
藤田には、その言葉が負け惜しみに聞こえたのか、
「随分と弱気だな。余程〈モサド〉とバレるのがまずいみたいだな」
マッケイは余裕の表情で、
「藤田。残念だが、君がバラしても我々は痛くも痒くも無いよ」
その言葉に、今度は藤田が驚いた。
「バレたら、イスラエルは世界中のボイコットリストに載るんだぞ!」
マッケイはノンシャランな表情で答える。
「それがどうした。我々は過去、4度の戦争、度重なる紛争を切り抜けてきた。すべては生きるためだ。その度に国連による制裁措置を受けてきた。だが、我々は生き延びた。
確かに制裁措置はキツいが、その辛さを乗り越える事によって、イスラエルは益々強固になれる」
マッケイの言葉には、生き抜いてきた者だけが持つ自信とオーラに溢れていた。その様子に圧倒される藤田。
「…じゃあ…何故オレを解放するんだ?」
藤田の問いに、マッケイは真剣な眼差しで答える。
「お前の〈真実〉を渇望したいという勇気に免じてだ…」
そして、深く息を吐くと再び語り始めた。
「最初から話してやろう」
そう言うと、イスに座り姿勢を正した。