Ethno nationalism〜激突〜-18
「いつ見ても、あまり良いモノじゃないな」
マッケイは苦い顔をすると、ゆっくりと席を立って藤田に近づく。
「さあて、ここからが本題だ。藤田。佐伯の情報で、ベイルートの暗殺事件を撮ったビデオテープは何処に隠した?」
マッケイは、藤田の顔を覗き込むように問いかける。
しかし、藤田は黙っていた。
マッケイは、再び語り掛けるように聞いた。
「何も困る事は無い。我々は君の味方だ。さあ、暗殺のビデオテープは何処なんだ?」
藤田は、うなだれた頭をゆっくりと上げて、夢遊病者のように喋り出した。
「…ビデオテープ……」
「そうだ。ビデオテープだ。何処なんだ?」
次の瞬間、マッケイは凍りついた。
藤田はマッケイの方に顔を向けると、睨むような目付きで言い放った。
「…誰が貴様のようなヤツに…教えるか…」
飛び上がらんばかりに驚くマッケイ。
「き、貴様!薬が効いて無いのか!」
狼狽するマッケイに対し、藤田は必死の形相で言い放つ。
「…オレが…何の策も持たずにノコノコ捕まったと思っていたのか?……だとしたたら、お前はエージェントとして失格だ…」
藤田の言葉に、マッケイは憎しみを露にする。その顔は、まるで赤鬼のようだ。
「…顔を見られたからには仕方がない。お前を殺してアパートを焼く事で、ビデオテープを永久に葬りさってやる!」
そう言うと、マリアの方を見て、
「殺れ、マリア」
マッケイの命令のまま、マリアはガンホルダーから銃を抜いた。
コルトのポケットモデル。
先の暗殺で、マリアが使った物だ。藤田の前に回り込み、銃を構える。銃口は、藤田の額に向けられた。
藤田を見据えるマリア。その氷のような目は、あの夜ベイルートで見せたモノだ。
藤田はその目を見つめ、
「その目。その表情で、お前はアビルとイラン軍高官を射殺した」
そして、マッケイの顔を見据える。
「残念ながら、オレを殺すとアンタは大変な立場に立たされるぞ」
逆転に向けたカードを藤田は斬り始める。
対してマッケイは、相変わらず余裕の表情だ。
「下手な悪あがきだな」
追い込められた状況で、藤田は自信に溢れた表情で言い放つ。