Ethno nationalism〜激突〜-16
ようやく事の成り行きが分かってきた藤田。だが、マッケイは不気味な笑いをあげると、
「さっきも言ったが自分の事を心配したまえ。
我々は、佐伯の動向を追っていた。すると、君が現れた。先日のベイルートの事件を撮ったそうじゃないか」
(いよいよ本題に入って来たな)
「どこに隠したんだ?」
藤田は口をつぐんだままだ。
「なるほど……黙秘かね。では、少々痛い目をみてもらうか」
マッケイは、そう言ってアゴをしゃくった。その先にはマリアがアーミースーツに身を包み、手にはダーツを握っている。
ゆっくりと藤田に近寄るマリア。靴音が床から響く。そして、おもむろに藤田の右腕にダーツを突き刺した。
「グァッ!!」
身をこわばらせる藤田。危うくカプセルを噛むところだった。マリアはダーツを引き抜くと、そのまま藤田の周りを品定めでもするように、ゆっくりと歩く。
「叫び声を挙げても良いぞ。この部屋は完全防音だ。心配いらん」
〈カツカツ〉と靴音だけが響く。
再び、マリアのダーツが突き刺さる。今度は左腕だ。
「ガァァッ!!」
激しい痛みが藤田を襲う。
そして、またゆっくりとした靴音が繰り返される。
肩、太股、ふくらはぎと責めたてていくマリア。その顔は、氷の様に無表情だ。
「どうだ?喋る気になったかね」
マッケイは笑みさえ浮かべる。その顔はサディスティックだ。だが、藤田はかろうじて気持ちを留めていた。
「…ダメか。仕方ない」
再びマリアの靴音が鳴り出す。そしてダーツは足の甲に突き立った。
「ぐがああぁぁっ!!」
大きく身体を揺らす藤田。その勢いでバランスを崩し、イスごと床に叩きつけられる。
これまでの、肉の多い場所と違い、肉が薄く、神経の集中している箇所の痛みは想像を絶する。
マリアは倒れた藤田を起こすと、再びイスの周りを歩き出した。
ダーツが右手甲に突き立つ。
痙攣にも似た、激しい身体の動きをする藤田。
「藤田…そろそろ言ってくれないか?」
藤田は、荒い息遣いでマッケイの問いかけに答える。
「…貴様のような…ヤツに…誰が言うか……」
これには、マッケイも仰天する。