Ethno nationalism〜激突〜-14
当時、アメリカはインドネシアに武器供与を行っていた。
スハルトは、アメリカの新型兵器のモルモットに、ティモール人達を使ったのだ。
そんな無惨な政策の結果を撮影しながら、藤田は奥へと進んで行く。
そして、焼けた場所との境界辺りに倒れる女性の死体があった。
死体に近づく藤田。その姿を見た瞬間、彼は驚いた。
横たわっていたのは静代だった。
「アアァッ!」
思わず声を挙げた藤田。荒い息をしながら、
(…ゆ…夢か……!!)
だが、次の瞬間、思わず声が漏れる。目の前が真っ暗なのだ。
藤田は佐伯同様に、頭から袋を被せられ全身をイスに拘束されていた。
「なんだこれは!」
藤田の声に答えるように、
「ようやくお目覚めかね。ミスター・フジタ」
その声は、地獄の底から響いてくるようだった。
その声が誰だかすぐに分かった。先日、アパートに電話を掛けてきた男だ。
藤田は舌で口内を探り、カプセルの有無を調べる。それは奥歯の間に留まっていた。
(…ヨシッ……)
「佐伯の様にオレも殺すのか?自分達のやった事を隠すために」
藤田の言葉に、電話の主ことマッケイは鼻を鳴らすと、
「何の事を言ってるのか分からんな……」
「佐伯は情報屋だった。その存在が邪魔で、お前らが殺したんだろう」
その時、ドアーが開く音がする。中に入って来たのは、ハイドパークで倒れた藤田をおぶった男だ。
「なんだ?」
マッケイは一瞥すると冷たく言い放つ。男はかしこまって彼に聞いた。
「先ほどの女ですが、如何いたしましょう?」
「ドライブにお連れしろ。丁重に取り扱いうんだぞ……」
マッケイの顔が醜く歪む。男は〈分かりました〉と言って部屋を出て行った。
「今のはどういう意味だ?」
問いかける藤田。マッケイは静かな口調で語り掛ける。
「人の事より自分の身を心配したまえ。それより先刻の続きだ。
君は佐伯が善良な人間で、我々が理由も無しに殺したと言うのかね?」
マッケイはひと呼吸置くと、再び語り始める。
「元々、彼は私のパートナーだったんだ」
(…なんだと……)
藤田の頭に、ジャーナリストの好奇心が芽生えた。