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平和への道のり
【アクション その他小説】

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Ethno nationalism〜激突〜-11

目覚めた彼女はシャワーを浴びると、バスローブのまま窓辺に立つ。
くすんだ街並みが白く染まっている。マリアはしばらくの間、その風景を眺めていた。



遅い朝食の後、迎えのクルマに乗ってサタニアフが現れた。

バックシートに乗り込もうとするマッケイ。

「…支局長…」

マリアが背中に声を掛ける。
振り返るマッケイ。だが、マリアは何も言わず俯いていた。その表情は、いつもの冷たさは消え失せ、不安を露にしたものだった。

「…行こう。時間だ……」

マッケイは静かに告げると、彼女の肩をひとつ叩く。
マリアはその言葉に小さく頷くと、バックシートに滑り込んだ。

サタニアフのローバーは、ゆっくりとロータリーを回ると、ホテルを後にした。





ーハイドパークー

雲は徐々に彼方へと消え失せ、日射しが戻って来た。それに伴い、雪も溶けて暖かささえ感じる。

正午過ぎ、藤田は約束のサーペンタインレイクの岸辺にあるベンチに座っていた。
ハイドパークそばの屋台で、ホットドッグにチップス、コーヒーを買い込み、景色を眺めながら昼食を摂っていた。

〈サーペンタイン〉の名の通り、巨大な大蛇のようにうねった形の湖は、太陽の光を受けて水面がキラキラと輝いている。

その水面を、恋人達が乗ったボートがゆっくりと移動していく。その先では、練習中なのか競技用ボートを忙しく、かつリズムを合わせて漕ぐ若者達の姿が見える。
岸辺の道はジョギングをする者や、談笑をしながらワーキングに興じる者。乳母車を押す若い母親の姿が。
愛くるしい赤ちゃんは天使のような微笑みを湛え、それを眺める母親も、慈愛に満ちた表情を赤ちゃんに向けている。

それを眺める藤田の顔も、自然と微笑んでいた。


昼食を終えた藤田は、腕時計を見た。針は2時を指していた。

(…そろそろだな……)

彼はジャケットの内ポケットに手を差し入れると、小さなビニール袋を取り出し中身のカプセルを眺める。

相川がくれた抗チオ〇ンタール薬。

藤田は、ビニールを破ってカプセルを口に放り込んだ。そして、昼食の入っていた袋と一緒にゴミ箱に捨てようとした時、

「…すいません…」

後から声が掛かる。ドキリとした藤田は、驚きの表情のまま振り返った。そこには、若い日本人の女性が2人立っていた。


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