Ethno nationalism〜激突〜-10
ーウィンザーー
藤田はいつもより早く目覚めた。昨夜のアルコールも手伝ってか、早く寝付いたため気分はスッキリしている。
洗面と着替えを手早く済ませると、いつものジャケット姿でアパートを出掛ける。
昨夜の内に降った、わずかな雪が家々の屋根を白く染めていた。
身の締まるような冬の朝。
決着の日。
藤田は道に点在する雪を避けながら、近くのコーヒーショップに駆け込み、サンドイッチとコーヒーをテイクアウトするとバス乗り場へと向かった。
しばらくして、ロンドン往きの長距離バスが来た。
これから数時間の移動。藤田はバスに乗り込むと、テイクアウトしたサンドイッチとコーヒーを口に運んだ。
ーベイズウォーターー
その日、マリアは早くに目を覚ました。
前日は部屋に籠り、ひとり様々な出来事に思いを巡らせていた。
いままでの自分、これからの自分、その自分が祖国のために何が出来るのか。
自問自答する。が、答えは出ない。そして夕方を迎え、マッケイが戻って来た。
マリアはそこで思考を停止させると、ルームサービスの夕食を共にする。
マッケイは夕食の間、いつにも増して饒舌だった。
よほど明日の準備がうまくいったのか、嬉しそうに語り掛ける。
いつものマリアなら、そんなマッケイを咎めるのだが何故かそんな気持ちになれなかった。
それどころか、マッケイの話に耳を傾け微笑みさえ浮かべる。
夕食を終えた2人。〈明日は大事なミッションだから〉とマッケイは言うと、シャワーを浴びて早々にベッドルームに消えてしまった。
マリアはひとり、バーカウンターのソファに座りグラスに注いだスコッチを傾ける。
昼間の思考が甦る。
飲めば眠れるかと思っていたが、いくら飲んでも目は逆に冴えていく。
マリアはシャワーを浴びると、バスローブを身に纏い、マッケイのベッドルームを訪れた。
すぐに目を覚ますマッケイ。
「どうしたんだ?」
マッケイは半身を起こし、ナイトランプをつけた。
柔らかい光に浮かび上がるマリアの姿。
「…眠れなくて……」
そう言ったマリアは、バスローブの結び目を緩める。
ビィーナスのような肉感溢れる肢体が、ナイトランプの光に妖しく映し出される。
マリアはそのまま、マッケイのベッドに潜り込んだ。