**王子様の秘密**-1
傾いた橙の濃い空の中。
誰もいない公園で一人揺れるブランコ。
その傍らで溶け合うように寄り添う二人。
重なる影‥‥‥‥。
のはずだったのに‥‥
私の理想のファーストキスは消えていった。
相手の容姿には申し分ないけど‥‥‥
私の気持ちを無視して‥‥
私の理想を無視して‥‥
もう落ち込みすぎて涙も出てこない。
とにかく授業に戻らなきゃいけないよね‥‥。
足が重いなぁ‥‥。
いいやサボろう。
今日、何しに学校来たんだろう‥‥。
私が向かった先は第二図書館。校舎の離れにある西洋風の建物で歴史書や古書などが高い本棚に行儀よく並んでいる。
普段、生徒達が利用するのは第一図書館でこちらにはめったに人が訪れない。だから職員室から鍵を借りてこないと入れないけど、ここで私の妙技の出番!ヘアピンで試しにいじってみたところ開いてしまい、それに味をしめた私はよく利用している。
というわけで今日も‥‥
よっ‥‥カチャン
失礼しま―す‥
誰もいないだろうけどね。
この古書の匂い、すごい好きなんだよなぁ‥
ここは私の第二お気に入りスポット。
第一は最近、あの忌まわしい輩が出入りしてるからあんまり行きたくない。
って、さっきまでそこにいたんだけどさ‥‥‥。
あの長い廊下、好きだったのになぁ‥放課後になると窓から差す夕日が床に落ちて等間隔に色が違って、デザインされたみたいでキレイだったのに‥‥。
はぁ‥‥。