I wish-1
「別れよう…他に好きな子が出来たんだ」
あなたが私にそう言ったのは、付き合い始めて3年が過ぎた頃だった。
一緒に暮らし始めて、もうすぐ1年だった。
私は、黙って頷いた。
…悲し過ぎて、涙もこぼれなかった。
私の部屋からあなたが居なくなって何日も経たないうちに、街であなたとあの子を見た。
透き通るような白い肌、短めで綺麗な金色の髪と、青く澄んだ瞳。
抜群のスタイルに、可愛らしい笑顔。
私とは180度違う子だった。
私にない物を、全て持っていた。
…私は、お気に入りだった長い黒髪に別れを告げた。
美容室を出た私は、その足でメガネ屋に行き、カラーコンタクトを入れた。
金髪と青い目は、自分でも驚く程、私に似合っていた。
同僚は、私の大幅なイメチェンに動揺したようだったけど、評判は悪くなかった。
でも、会社の廊下で会ったあなたは、新しい私を見てため息をついた。
何が足りないの?
どこがよくないの?
私は、会社帰りに美白エステに通った。
あなたの“好み”になりたかった。
意を決した私は、預金通帳を持って、銀行に行った。
銀行から向かった先は、美容整形外科。
鼻を高く、彫りを深くし、目頭を切開して、脂肪を取り、豊胸手術をした。
透き通るような白い肌、綺麗な金色の髪、青く澄んだ瞳に、抜群のスタイル。
全財産をはたいて、私は、あの子に生まれ変わった。
もう私にない物はない。
私は、全てを手に入れた。
…それでも、あなたが振り向いてくれる事はなかった。
こんなに愛しているのに?
…本当は、わかっていた。
整形をしても、髪を染めても、あの子にはなれない事。
わかっていたけど、少しでも近付きたかった。
…もう一度、あなたに愛されたかった。
今はない、あなたの温もりを思いながら私は、深い、深い眠りについた。