やっぱすっきゃねん!U…@-2
ー夕方ー
夏休みの練習日程が終了した。明日からの、残り2日間は休んで新学期を迎える。
そんな中、榊が皆を整列させた。
最初はいつものミーティングだったが、〈ああ、それから〉と前置きをすると淡々と言った。
「オレは本日をもって監督を辞める」
(エッ……?)
部員達がざわめく。佳代は榊の言った意味が分からなかった。
再び榊が言葉を続ける。
「始業式で発表されるが、私は東海中学へ異動となった」
榊は部員ひとり々を見渡し、言葉の意味が浸透するのを待ってから続けた。
「従って、本日をもって監督を永井先生にお願いした」
榊の言葉が終わると同時に、部員から手が挙がった。
山下だ。
「永井コーチが監督をされると、新しいコーチはどうなるんですか?」
「それは永井監督から説明してもらう」
榊はそう言って永井に発言を促す。永井は少し緊張した面持ちで1歩前に出ると、語り始めた。
「しばらくの間、平日は3年生にカバーしてもらう。土、日については臨時コーチを〈ある人〉にお願いしている」
(…ある人?…新しい先生かな…)
再び手が挙がる。今度は直也だ。
「それは誰ですか?」
直也の質問に永井は困った顔で、
「それは当日発表する」
そこでミーティングは終わり、解散となった。
練習後、榊と永井は職員室で休憩していた。
永井が冷蔵庫のスポーツドリンクのボトルを手渡しながら、
「榊さん。長い間、お疲れさまでした」
永井がしみじみとした表情で言った。
「13年間……何だかアッという間だった」
「でも、その間に8回の県大会でしょう。榊さんの尽力の結果ですよ」
榊はタオルで汗を拭うと、ボトルを開けて、ひと口飲んだ。
そして、遠い目をすると、
「最初が強烈だった。あれ以来、ずっとそれを追い駆けていた」
再びボトルを傾け、一気に半分ほど飲むと永井に目を移して、
「結局はダメだったが……」
「それが藤野一哉…ですか?」
「ああ。あんなヤツは初めてだった。全国制覇した時も、あいつの球を打てるヤツなんていなかった…今でも鮮明に覚えてる……」
昔の思いを熱く語る榊に対して、永井は不安な顔で、
「でも、私なんかに務まるでしょうか?なんだか不安で……」
榊は笑顔を浮かべ、優しい口調で答えた。