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DEEP DIVER玲那〜闇に沈みし者〜
【ファンタジー 官能小説】

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DEEP DIVER玲那〜闇に沈みし者〜-7

「…さて、そろそろ僕は職員室に戻るよ。桜龍君、大神室は少し内向的なところがあるが、これからもよろしく頼むよ」
 二人の話をまるで聞いていなかった玲那は、いきなり話を振られて小さく驚いた。
「えっ!?あ、はい。勿論、喜んで」
「それじゃあ、僕はこれで失敬するよ…」
 飛騨はそう言うとその場を立ち去り、奈々花は名残惜しそうにその場に立ち尽くした。 やがて飛騨の姿が見えなくなると、玲那はポケットの中からお守りを取り出した。桜龍神社のお守りだが、中には玲那謹製の呪符が入っている。玲那はそれを、傍らで飛騨を見送ってぼーっとしている奈々花に差し出した。
「今日、付き合ってくれたお礼にこのお守りを奈々花ちゃんにあげる」
「あ、ありがとう…。お、お守り………?」
「うん、そう。うちが神社だから。危難を避けるおまじないがしてあるから、色々と助けてくれると思うよ。佩帯符が入っているから、鞄じゃなくて身体の右側に持っていてね」 言われて奈々花は首を傾げる。
「右?」
「一応、作法とかあってね。女の人は右で男は左なの…」
「へ〜え、そうなんだ。それじゃあ、紐を通して右のポケットに入れておきます。ありがとう」
「それじゃあ、私は用事があるからこれで。今日は楽しかったわ。ありがとう」

 奈々花と分かれた玲那は急ぎ教室へと戻り、屋上へ向かった。屋上から建物全体に怪しい気配が無いか調べる為である。
「学校の前に祠とかがあって、屋上に移転したとか敷地に残っているとかあるけど、ここはそう言うのも無いのね…」
 屋上に上がると既に日は暮れ、菫色の絵の具が溶けだしたような空には宵の明星が輝いていた。玲那は景色に見とれることもなく鞄を地面に下ろし、中から塩を取り出して結界を張ると、懐から紙で出来た人形を四枚取り出し、印と共に宙に放つ。
「急急如律令…」
 宙を舞う人形が一瞬光を放ち、童子姿の子鬼に形を変じた。それらは玲那に従う式神で、四匹はそれぞれ星熊童子、虎熊童子、金熊童子、石熊童子と呼ばれている。
『何か御用ですか?』
 童子の一人が玲那を見上げ、首を傾げる。頬に星形の痣がある星熊と呼ばれる童子である。
「この建物の中に怪しい妖気を発する物とか人とか、変な霊気や気脈の流れが無いか調べて来て欲しいの」
 童子達の目線まで腰をかがめ、命を下す玲那。すると間髪入れずに目の吊り上がった生意気そうな童子が不平を洩らした。髪に黄色のメッシュが入った童子、虎熊童子である。
『え〜、そんなの自分で調べればいいだろう?ったく、童子使いが荒いんだから…。そんなだから太るんだよ…』
 悪態をつく虎熊であったが、次の瞬間拳骨が頭部を直撃し、しばし、苦悶と共に黙り込む。
「私がうろうろあちこち調べ回っていたら直ぐに敵に気付かれるでしょ。ごちゃごちゃ言ってないで、とっとと怪しい物がないか調べてくるっ!!」
 玲那の言葉に頷く星熊童子。他の童子もそれぞれ了解し、虎熊を残して三方へと消える。
「はいはい、あなたも行ってらっしゃい」
 促され、踞って悪態をついていた虎熊も渋々亜空間へと姿を消す。
 その様子を、溜息を吐いて見送る玲那。
「やれやれ…。さて、吉と出るか、凶と出ますか………」

 屋上で玲那が式鬼を放っている頃、美貌の英語教師片岡佐和子女史は、LL教室に隣接している準備室に一人残り、昼間行った小テストの採点をしていた。LL教室は音楽室などの特別教室が集められた新校舎の四階にあり、放課後ともなれば人の気配がなくなる。新校舎の一階には第二職員室があり、テストの採点などそこですれば良いのだが、佐和子は静かな環境を好み、いつもこの準備室に籠もりテストの採点や授業の下調べなどをしていた。
 ふと気が付くといつしか日は暮れ、グラウンドから聞こえる運動部の喧噪も、調子の外れた吹奏楽部の練習する音も聞こえなくなっていた。肌寒さを感じた佐和子は、大きく伸びをすると強張った肩をほぐし、冷えてしまった紅茶の残りを飲み干した。腕時計に目をやると既に六時を回っている。テストの採点はまだ少し残っていたのだが、集中力が切れた彼女は残りを自宅でしようと採点の終わったテストを片づけ始める。


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