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DEEP DIVER玲那〜闇に沈みし者〜
【ファンタジー 官能小説】

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DEEP DIVER玲那〜闇に沈みし者〜-6

「あ、あの、私…なんか…」
 消え入りそうな声で応じる少女。口の中でもぞもぞ何やら言い訳をしているのだが、肝心の言葉の中身についてはまるで判然としない。最初は笑みを浮かべていた玲那も次第に苛立ち、こめかみに太い血管が浮かび上がる。そして次の瞬間、心の中で何かがぶちっと音を立てて切れてしまった。
「いいから、案内しなさいっ!!ほら、あなた、名前はなんて言うの!?」
 強引に少女の腕を引っ張る玲那。鬼気迫る玲那の様子に悲鳴を上げる少女。
「あ、あの…大神室奈々花(おおかむろななか)…です」
「それじゃあ、今からあなたのことは奈々花ちゃんって呼ぶからねっ!私のことは玲那ちゃんって呼ぶのよっ!!別に呼び捨てだってかまわないから!」
「そ、そんなぁ、呼び捨てなんて私…。あああ〜〜ん、私のかば〜ん!?」
「そんなもの、後で取りに戻ればいいでしょ。私も置いていくんだからっ!!」
「あ〜ん、お母さ〜ん!!!」
「ちょっと、人聞きの悪い悲鳴を上げないでよ。何だか私が悪いことをしているみたいじゃないっ!」
 泣き叫ぶ奈々花を無視して、玲那は問答無用で教室の外に引きずり出した。
「まずはこっちの方から探検してみようっ!」
 玲那は奈々花と無理矢理腕を組むと、人目もはばからずに歩き出した。気の小さい奈々花は赤面し、狼狽するが、何を言っても玲那が聞き入れないと悟ると、諦めた表情で小さな溜息を吐く。
「はぁ、いいんです。私なんて…」
「若いのに、な〜に年寄りじみたこと言ってるのよ。それより、こっちの方には何があるの?」
「…ええと、渡り廊下を渡った先にあるのは実習教室のある校舎です。音楽室やら実験室、美術室なんかがあります」
 奈々花はおどおどとした様子で、玲那に教室を案内していった。友達が少ないというのは本当なのだろう、玲那の目には奈々花は他人との距離感が計れず、相手の顔色をうかがってばかりのように思えた。それが却って他人を不興にする原因なのだが、本人はそれが分かっていない。
「と言ってもね」玲那はひとりごちた。「…と言っても、一所懸命なのは分かるし、これが精一杯なんだよね。それはそれで好きかもね♪」
 玲那の独り言に首を傾げる奈々花。
「………あ、あの?なんです??」
「私、奈々花ちゃんが好きかもって話」
「………か、からかわないで下さい」
 一瞬、頬を紅潮させ、上擦った声を出す奈々花。
 そこへ、白衣を着た男が二人の前に現れた。背が高く、やや細身であったが端整な顔立ちをしている。インテリジェンスも高そうで、知的な美青年と言った風貌ではあるが、玲那は砂糖菓子のような種類の男には些か抵抗があった。
「大神室じゃないか。友達と冗談を言って歩いているところなんて、初めて見たなぁ…」
 白衣の男は玲那と奈々花に気が付くと、そう言って声を掛けてきた。すると奈々花は男のバリトンに反応し、電気が流れたように硬直し、一瞬にして顔を赤くした。
「あ、いえ、その…、友達が…友達なんですけど、友達とは友達が違うというか、…彼女は転校生で、それで校内が案内されて、いえ、案内して…」
「へえ、転校生か。僕はこの学校で生物を教えている飛騨 文弘だ。よろしく」
「桜龍 玲那です」
 気のない会釈をし、飛騨の気を探る玲那。薬品の匂いだろうか、一瞬鼻腔の奥につんとした刺激臭を感じるが、霊的なものではなく、根暗そうな優男ではあっても、霊的なものとは関係ないらしい。
「(何、奈々花ちゃん。こんな青瓢箪が好みな訳?まあ、奈々花ちゃん温和しいし、こんなオタクっぽいのが好きなのかな…)」
 玲那は心の中で呟きながら、奈々花の方へと視線を向けた。見ると、耳まで赤くした奈々花があたふた、しどろもどろになりながら飛騨の言葉に応じている。いじらしいと言うか、恥ずかしさのあまり早くこの場を立ち去りたいという感情と、いつまでも話をしていたいという感情の二律背反が見て取れ、玲那は微笑ましい気持ちになった。


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