イヴの奇跡-1
雪の降り積もる
この寒い寒い公園に
私は捨てられた。
世間では『くりすます』
なんて言葉が行き交い
排気ガスで息詰まる街に
鮮やかなイルミネーションが
広がっている。
街を行き交う人々全員が
まるで幸せそうな顔をしているようにも見えるのに…。
なんで…
こんな日に…
まっくろなそら。
深々と降る雪は
綺麗だけど
悲しくて。
寒くて。
もう私を
見てくれるヒトなんて
誰もいない。
そう…
ひとりぼっち。
フッと雪が止む。
『…?』
見上げたそこには…
『クリスマスに捨てられたのか。お前…。』
綺麗な顔立ち。
深いサファイヤ色の瞳。
黒いスーツに黒く細いインテリアっぽいフレームの眼鏡が私を…いや、猫の私を薄汚い段ボール箱から広い上げた。
あった…かぁい。
ゴロゴロと喉を鳴らすこの猫はフワフワしたロングヘアーの一歳の子猫だ。
この猫だけ、体も小さく貰い手がいなかったために、残酷にもクリスマスのこの夜、自分勝手な人間の手により捨てられた。
『動物を飼うなんて柄じゃないが…神様からのクリスマスプレゼントとしてお前を受け取ってやろう。』
…が、クリスマスのこの夜。
自分勝手な人間によりたった今、拾われた。
『んーむ、名前ぐらい…必要だ。』
サファイヤブルーの瞳がレンズを通して猫を見つめる。
名前を考えているのか、うろうろと段ボール箱の前をスーツ姿で往復している姿は余りも不自然だった。
『今日は確か…イヴだったな。じゃ、お前は今日からイヴだ。神崎 イヴ。』
スーツ姿の男は子猫をスーツの上着の中に大事そうに抱えて家路へと帰るのだった…。