イヴの奇跡-4
深夜0:00を過ぎた。
12月25日。
雪はより一層、深く深く降り積もり、街にはシュガーパウダーを塗したような景色がある。
今日はクリスマスと呼ぶに相応しい日になりそうだった。
が。
神崎にクリスマスもへったくれもあるわけがない。
彼に休みなんてものはないし、クリスマスなんて企業を営む神崎にとって更に忙しい一日になるだけの日だ。
それに、神崎が幼い時からクリスマスを祝う習慣なんてなかったために、神崎に記念日などという言葉は無縁だった…
が。
奇跡は起こる。
両親は忙しくいつも不在。
幼い時から英才教育を施され、クリスマスであろうと勉学に習いごと。クリスマスのクの字すら味わえなかった神崎に神様からのプレゼントだったのだ。
『んっ…寒…っ』
ブルブルと身を震わせて体をムクリと起こしたのはイヴだ。
眠たい目を擦り、ご主人様を見ると、ご主人様は安らかに眠っていた。
さむいなぁ…
ぁ。お布団に入っちゃえ♪
モゾモゾと神崎の足元から布団内へと侵入をするイヴ。
なんか…動きづらい。
そう思いながらもパジャマ姿のご主人様のお腹に抱き着くようにしてのしかかる。
ん♪あったかぁぃ…。
そうしてスヤスヤと眠りに入るのだった。
息苦しいな…。
パチと目を開けると、目の前、いや、自分の上に女がいた。
夢か…?
暫く、女を見つめる。
緩いウェーブした髪は肩につくかつかないかの長さ。
長い睫毛と整った顔立ち。
そして、大きめな胸…
生の女をこうして抱くのは、いつ振りだろう?
かといって、
さほど昔の話でもないが…。
最後に女を抱いたのは、残業の俺を待ち伏せして、セックスだけの関係を望んだ部下だったか。
たまたま、仕事が重なり苛々してたせいか、乱暴に抱いたのを今でも記憶している…。
『………誰だ、お前?』
眠たさで現状の把握が大分遅れたが、自分の上で裸体で眠るこの女の顔に俺は全くと言っていいほどに、見覚えが無かった。
しかし…、
久しぶりで…
一応、男なもんで…
体が嫌でも反応してしまう。
…それにさえも気がつかないこの女。