イヴの奇跡-2
今日捨てられたのは
神様がくれた必然で。
今日拾われたのは
神様がくれた運命。
そんなことに
一人と一匹は
気がつきもせずに。
男の名前は神崎 圭(カンザキケイ)
父親はアメリカ人でアメリカと日本を繋ぐ大手会社の社長だ。そして母親が日本人。
海外をも飛び回り活躍している超がつくほどの人気モデルだ。
そんな二人を親にすると必然的に二人の子供は優秀な知能と美しい容姿を兼ね揃える。
それが、神崎圭だった。
神崎は22歳という若さでブランド会社の社長として多くの部下を従え、アクセサリーに鞄、服に家具など多くの商品を作り上げて今や知らない人間は居ない認知度と高い売り上げ実績を記録していた。
…勿論、父親の力もあるが、彼は彼なりの努力でここまで登り詰めた証だ。
『さ、着いたぞ。ここがお前の家だ』
カードを差し込むと自動的にドアが開くシステムから高級マンションの高い位置で生活していることが見受けられる。
そして玄関から廊下、扉を隔て広いリビングに入ると、白黒の家具で統一された落ち着きのある雰囲気が広がった。
目の前には硝子越しに人口的に作り出された夜空が広がっている。
『綺麗だろ…このためにこの部屋を買ったんだ。』
と、優しくイヴを撫でて神崎は呟いた。
そしてリビング内から右の扉を開くとワインレッド色の天井付きベッドが真ん中にどっかりと置かれた部屋に案内された。
『ここが今日からお前が好きに使っても良い部屋だ。まぁ、お前には広過ぎるだろうが、それでも1番狭い部屋なんだ。』
そう言った神崎の顔が少し歪んで、悲しそうに見えたことに、今のイヴには気がつかなかった。が、そのことについては後々分かるだろう。
『さて、部屋紹介は後にして…まずは風呂…だな。』
イヴの部屋を出て神崎はスーツとネクタイをソファーに投げ飛ばす。そして縦ラインが入るワイシャツの袖を肘まで捲くると浴室へと向かった。
きゅっ。
浴室に響く音、
次いでさぁぁぁぁぁ。とシャワーから温かいお湯が溢れ出した。
−ぇっ、、やだ!怖いよぉ!
イヴは浴室から逃げようとしたが、リビングへと繋がる扉は閉められていた。
にゃぁにゃぁとイヴの声が浴室に響く。
『ホラ、逃げるな、汚いだろ?』
抱き上げられてお湯が体にかかる。初めての感覚にイヴは更に暴れようとしたが、所詮は人間と動物。敵うわけもなくイヴは降参をせざるを得なかった。先程まで必死に逃げようとしていたイヴだったが、お湯にも慣れて自分を洗う神崎を見上げた。
−わ…さっきと違う格好だぁ〜。