「美女と野獣・・・」-67
でも思い直した。
私が死んだらSくんは悲しむって言ってくれたけど、
Sくんの存在があるからこそ、私は死ぬ事なんて出来ないと思った。
だって死んだらSくんと笑い合えないもんね。
だから必至に耐えた。
耐え続けた。
身体が犯されても、
心だけは犯されまいと。
草むらからSくんが現れてね・・・
私、ほんとに、どうしようかと思った。
悩む事なんか無かったのにね。
結局嘘をついちゃった。
嫌われたくなかったから・・・
失いたくなかったから・・・
最低だよね。
こんな汚れた女と乾杯させてさ、
こんな汚れた女の手を握らせてさ、
ほんと申し訳ないよ・・・
表面上では幸せだったけど、
一生どす黒い嘘の塊りを宿して生きていくなんて
死ぬより辛いと思ったのね。
だから・・・
逃げたんだ。
学校を辞めたのは転勤なんかじゃなくって
私の勝手気ままなわがまま。
Sくんにどんな顔して会えばいいの?
Sくんが近くにいるのに
Sくんと話せないなんて酷すぎるよ。
両親は昔のあの事件以来、
私が学校へ行くかわりに、
もし辞めたくなったらいつでも辞めていいって言ってくれてたから、
今回もそれに甘えたんだよね。前回もそう。前々回もそう。
私はそんな人間なんだよ。
何にも立ち向かってなんかいない。
逃げてるだけ。
甘えてるだけ。
怯えてるだけ。
本当にごめんね。