「美女と野獣・・・」-63
チンタラ話しやがって!このクソが・・・!
「んな事どーでもいいから!!何て言ったんすか母親は?!」
「・・・転勤だと。そう言っていた。主人の転勤だと。俺は信じなかったがな。」
転勤?そんな事はあり得ない。
根拠は無いが、あり得るはずもない。
「思い当たる節があった。Rは・・・とけ込んでいなかったろう。クラスに。」
「・・・まぁ。・・・っすねぇ。」
「イジメとは思いたくはないが、直接本人に訊いてみようと思ってRに代わって貰ったんだ。」
「Rは出たんすか?電話に!」
「あぁ。すぐに出たよ。既に泣いていた・・・。ありがとう・・と・・・」
「は?!」
「・・ありがとう、とお前に伝えて欲しい、と。そう言っていた。」
「・・・」
「イジメではないよ。俺は確信した。引っ越さなきゃいけないんだ。やむを得ない・・。」
「オレは信じられないっすね。直接訊かない事には・・。」
「今までで一番楽しかった、とも言っていたよ。イジメられてたらそんな事は言わんだろぅ。」
担任ってのはどこまでクラスを見れているのか。
コイツはどこまでバカなのか。
制服がパクられた事をもう忘れているのか。
目の前に座っているアホ面を踏んづけて色々聞いてやりたかったが、止めといた。
「で・・Rは今どこに?何処にいるんすかね?」
「・・わからん・・。教えてくれなかった。Rも母親も。」
ホント使えねー。
「電話があったのはいつっすか?!」
「・・・昨日だ。」
「はぁ?!バカじゃねーの?!ったく!」
オレは部屋を飛び出し、待ち合わせた公園へと無我夢中で向かった。
何度も何度も探し歩いた街並み。
でも結局見つからなかったRの家。
それでももしかして・・・万が一の望みを託して、
引越しのトラックでも停まっている事を期待して、
見えないRの後ろ姿を必至に追い掛けた。