「美女と野獣・・・」-62
いつまでたってもギャーギャーうるさい周りの連中に怒号を浴びせたい位、
夢中になってるつもりが夢中になっていなかった。
一心不乱にキョロキョロと見渡すも、雑音が邪魔をしてRの姿をかき消してしまう。
結局始業式ではRを目撃する事が出来ず、ガックリと肩を落としながら
教室へと向かった。
別れの言葉も、挨拶も無い別れがどんなに虚しいモノか・・・。
教室に入るや否や、オレは自分の目を疑った。
あるべき筈のRの机が・・・
オレの席の後ろにあるべき筈のRの机が無い・・・
心臓が著しくバクバク鳴るのが分かった。
予想したくはないが、予想せざるを得ない状況に陥り、
あまりに青ざめているオレに皆が心配するほどだった。
Rの行方を教えろ!と、授業中にしつこく質問攻めしたオレに、
担任は落ち着いた口調で、放課後に来なさい、と促した。
「Rは・・・泣いていたよ。」
職員室に猛ダッシュで駆け込んだオレを、誰も居ない薄暗い小さな部屋へと導き、
重い口調ながらゆっくりと担任が口を開いた。
「・・・え?」
「いや、電話があってな。家に掛かってきたから何か急な・・・災いか?と思ったよ。」
「・・・で?」
「夏休み位は俺達教師ものんびりしたいもんだ。そうだろ?」
「そうじゃなくてぇ!なんつったんすか?!」
「まぁそう慌てるな。・・・相手はRの母親だった。学校を辞めさせて欲しいと言われたよ。」
「なんで?!なんでっすか?!」
いちいち曇らせる担任の話し方にイラつきつつも、何とか辛うじて語尾だけ敬語調にしておいた。
「いや、俺も驚いた。まだ越してきて数ヶ月・・・。なのに辞めたい。・・・前例が無い・・んだよなぁ。」
蹴飛ばしてやろーかと思った。
椅子を蹴り上げよーかとも思った。