「美女と野獣・・・」-5
その2
Rは彼と順調に付き合っている様に思えた。
美男と美女がカップルになったという事は瞬く間に学校中に知れ渡り、
誰もが羨むまさにお似合いのカップルだ。
Rの事を好きだった男子は大勢いただろうが、相手が相手なので
どうせ自分とは不釣合いですよ、と口を尖らせては納得するのだった。
逆に彼を好きだった女子も負けじとたくさんいたが、
Rの美貌より遥かに劣っている自分に苛立ち、
しかしどうする事も出来ない自分に苛立ち、
Rをただただ憎む事しか出来なかった。
休み時間になるとどちらともなく会いに行き、
廊下で楽しそうに笑顔を振りまいて語り合う。
周りの生徒達が全く目に入らずに、
二人のいるその空間だけが隔離されている様な、
学校内だけどとある別世界にいる様なそんな雰囲気をかもし出し、
云わば芸能人の如く他を寄せ付けないオーラが、そのカップルから放たれている。
放課後になると彼は部活に精を出し、Rはそんな彼をいつも隅の方で眺めていた。
そして部活が終わるとそそくさと二人仲良く手を繋ぎ、
ブラブラダラダラ歩いて帰路につく。
付き合いだしてまだ2週間というある日、Rは彼に呼び出された。
普段はバスケ部やバレー部が汗水垂らして一生懸命部活に励み、
ワイワイガヤガヤと騒々しい体育館が、この日この時ばかりは人っ子一人いず、
シーンと静まり返っていた。
夏休み間近の期末試験1週間前という事で、毎日行われるハズの部活動が
2日に一度というペースダウンを余儀なくされたのだ。
閉め切った体育館に入った瞬間、
ムンムンとする熱気でRの呼吸を妨げる。
彼は体育館の舞台の裾に立ち、こっちこっち、と手招きしていた。
何か面白いモノでもあるんだろーか、と興味を抱き、
彼のいる方へと歩き出す。